石破首相が決戦の日に漏らしていた苦悩の胸中――大島新×日テレ政治部が“会話”で映し出すトップの政治家たち
■殺伐としたSNSの政治論争に対してテレビが果たす役割 近年は多くの政治家が積極的にSNSを利用するようになったが、一方的に発信される言葉に、支持者やアンチが罵声や中傷を繰り返す殺伐としたプラットフォームになっているのが現状だ。翻って、今回の番組で映し出される政治家たちと大島氏の“会話”は、話し方や表情も含めて血の通ったコミュニケーションが成り立っており、テレビというメディアならではの大きな役割を果たしている。 大島氏は「変な言い方ですが、政治って面白いと思うんです。もちろん政策も大事ですが、人としての政治家という部分も一つの見方だと思うので、そこを楽しんで見ていただきたいです」といい、井上氏も「普段のニュースでは見せない表情や言葉から、政治家って面白い人たちなんだと思ってもらいたいです。いろんな方向性はありますが、この国のトップになっていい国を作りたいという思いは確かにあって、そこを大島監督が見事に引き出して描いてくれています」と見どころを語った。
衆院選報道にもたらした変化は
「政治報道のイノベーション」を目標に掲げて臨んだ今回の取材を経て、日テレ政治部は衆院選報道にどのような意識で取り組んだのか。 井上氏は「政治家の皆さんはいろいろ課題や問題もあって、うまくいかないこともあると思いますが、大島監督の取材を見ていると、この国を何とかしたいという熱い思いを全員が持っている。衆院選はそういう人たちを選ぶ場であることをきちんと伝えたいという思いでやってきました」と力を込める。 さらに、「テレビの選挙報道は本当に必要な情報を届けられていたのか?」という問題意識をもとに、公示日から連日、YouTubeで『投票誰にする会議 ~みんなの声でつくる衆議院選挙2024~』と題した番組を配信。「事前報道と結果報道の両輪で動いて、その帰結点が今回のドキュメントになるのかなと思います」と位置づけた。 ■次回作のテーマは未定も…石破首相に「人として興味」 『なぜ君は総理大臣になれないのか』に始まり、『香川1区』(22年)、『国葬の日』(23年)、そして今回の番組と、政治をテーマにしたドキュメンタリーを作り続ける大島氏。次に追う人物はまだ決まっていないそうだが、「個人的に石破さんはウォッチしていきたいと思いました」という。 その理由を聞くと、「人として興味深いと思いました。現状は自ら変節したことで墓穴を掘りましたが、もしかしたら、かつての小渕(恵三)さんのように、やっていくうちに支持率が上がっていくかもしれないし、来年の参院選の前に退陣するかもしれない。その行く末は、映像作品にするかは別として単純に興味があります」と答えてくれた。 石破首相を追うドキュメンタリーをテレビで放送することは可能なのか。井上氏は「有権者の投票行動に資する情報を出すという点で言えば、もちろん選挙のない時期が問われ、テーマにもよると思いますが、最高権力者の人間性に迫るということは、十分取材対象になると思います。一時期は“政治的公平性”という壁を自分たちで作って、なるべく控えようという雰囲気もありましたが、この1~2回の選挙でそれも変わってきている感じがあります」と見解を語っている。