[懐かし名車] ミツビシ パジェロ(初代):オフローダーを“レジャービークル”に変えた、愛すべき革命児
民生向けにも4WD車が売れ始め、ビッグホーンやジムニーなどライバルが次々に登場する中、いかにも時代遅れのジープは大胆な近代化/乗用車化が必要と訴える開発側。かたや一方販売サイドは、急激な変革でそれまで一番のお得意様だった自衛隊などへの納入に悪影響がでることを懸念していた。そんな葛藤を経て発売された初代パジェロは、折からの好景気やレジャーブームに乗って予想外のヒット。市場の声に応えるべく、年々豪華で快適なクロスカントリー4WDモデルへと進化していった。 【画像】ミツビシ パジェロ(初代) ×17枚
長年、ジープをライセンス生産してきた三菱だからこそ生まれた、オリジナルの4WD車
まったく新しいコンセプトの新型車が世に出るまでには、多くの関門がある。ときにはどれほど出来栄えがよくても、経営陣の理解が得られずに世に出ることなく消えてしまう企画もあれば、開発途中で世の中の状況が変わり、軌道修正されて、まったく別のクルマになるなんてこともある。 1982年に登場したパジェロは、そうした関門を苦労して乗り越え、作り手側が予想していなかったほどのヒットとなった。それは、オフロードカーの代表格であるジープを長年作り続けてきた三菱だからこそ企画され、日本が十分に豊かになった時代に生まれたからこそ、成功した1台だった。 三菱は1952年からアメリカのウイリスオーバーランド社製ジープのノックダウン生産(部品を輸入して国内で組み立てる)を始めていた。それは同年に発足した保安隊(現在の陸上自衛隊)の軍用車両としての需要に支えられ、建設業や林業、電力会社などの現場でも欠かせない足となった。 ただし、1956年にその完全国産化を完了しても、ウイリス社との契約で北米などの先進国への輸出はできず、庶民のマイカーは“遠い憧れ”という当時は、国内需要も知れていた。そこで、三菱はジープで培った技術を活かしつつ、ウイリス社のライセンスに抵触しない、オリジナルの4WD車開発を開始。1978年にピックアップトラックのフォルテとして発売される。 ◆デビューからしばらくはショートホイールベース(2350mm)のメタルトップとキャンバストップのみ。エンジンはそれぞれに2.3Lのディーゼルとディーゼルターボ、2.0Lのガソリンの3タイプが用意された。 【三菱パジェロ ミッドルーフワゴン3000スーパーエクシード(1989年式)】●全長×全幅×全高:4605mm×1785mm×1900mm ●ホイールベース:2695mm ●トレッド(前/後):1435mm/1450mm ●車両重量:1930kg ●乗車定員:7名 ●エンジン(6G72型):V型6気筒SOHC 2972cc ●最高出力:150ps/5000rpm ●最大トルク:23.5kg-m/2500rpm ●10モード燃費:6.8km/L ●最小回転半径:5.9m ●トランスミッション:4AT ●サスペンション(前/後):ダブルウィッシュボーン式/3リンクコイル式 ●タイヤ:265/70R15 ◎新車当時価格(東京地区):333.0万円 ◆スーパーエクシードのインパネ。パジェロ自慢のコンビネーション(3連)メーターは、右から高度計/傾斜計/デジタル内外気温計。ちなみに初期モデルは油圧計/傾斜計/電圧計の配置だった。また標準装備のカセットデッキは7曲までの飛び越し選曲ができる当時の最新タイプ。 ◆スーパーエクシードは本革+ファブリックのコンビシートを標準装備。運転席と助手席はヒーター付き(座面+バックレスト) ◆サイクロンV6エンジン(6G72型):開発当初は(ランドクルーザーなどに比べ)大きすぎないことを商品企画としたパジェロだが、バブルに向かう好景気とともにボディは大きくなり、後期モデルにはV6の3.0Lの6G72型も搭載されている。 ◆ラダーフレームやサスペンションは小型トラックのフォルテ、パジェロと同じ年に発売されたデリカ4WDと共通とし、開発の効率化が図られた。パートタイム式4WDで、舗装路では後輪2輪駆動も可。オートマチックフリーハブもオプション設定された。