[懐かし名車] ミツビシ パジェロ(初代):オフローダーを“レジャービークル”に変えた、愛すべき革命児
ピックアップトラックのシャーシを使いながら、スタイリッシュで快適なオフローダーとして企画
そのシャーシを使い、ジープやピックアップトラックには求められない、スタイリッシュで快適な本格オフロードカーとして企画されたのがパジェロだった。ただし、固定客を相手に、半ば手作りで生産されていたジープとは違い、量産が前提のパジェロの企画は、当初三菱社内でも理解されなかった。大規模な投資で大量生産ラインを組んでも、その回収は難しいと思われたのだ。 しかし、世界市場で月間1900台という大風呂敷の需要予測で企画を通した開発陣の苦労は、見事に報われた。4ナンバーの商用2ドア車しかなかった発売当初こそ苦戦したが、クラス初の5ナンバー乗用規格の4ドア車やAT車が出揃った1985年に年間1万台の大台に乗せ、豪華仕様のエクシードが1987年に加わると、勢いはさらに加速。2代目の登場翌年の1992年には、国内だけで8万台あまりを売るベストセラーモデルとなる。 人々がクルマでライフスタイルを表現する。そんな豊かな時代に、本物のオフロード性能と快適性を両立させたパジェロは、ファッショナブルで個性的な乗り物として爆発的に支持されたのだ。今でこそ、軽自動車からミニバンまで、多くの乗用車で4WDが選べるが、1960年代までのそれは、足元の悪い現場用の特殊車両というのが世界の共通認識。 1970年代にスバルが世界初の乗用車型4WDを発売するが、それとて、快適な現場巡回車を求める東北電力の要望から生まれたものだ。パジェロ登場以前のジープは、その特殊車両の最たるもの。荒れ果てた戦場を何がなんでも走り抜けるのが目的だから、とにかく堅牢で信頼できることが設計思想だ。走破性こそ高かったが、悪路はもちろん、一般道でも長時間の乗車が苦痛なほど乗り心地は悪いし、4WDのメカはガーガーとうるさく、高速道路で横風にあおられると、どこに飛んで行くかわからないほどシャーシ性能は低かった。 ◆ジープ譲りの悪路走破性と乗用車的な快適性を両立させた、世界初の乗用車型オフロード4WDだった。 ◆メタルトップ/キャンバストップ(1984年式):デビューからしばらくはショートホイールベース(2350mm )のメタルトップとキャンバストップのみ。エンジンはそれぞれに2.3Lのディーゼルとディーゼルターボ、2.0Lのガソリンの3タイプが用意された。 ◆悪路の振動を車体だけでなく、シートでも吸収するサスペンションシートを運転席に採用。コイルスプリングとショックアブソーバーを組み合わせたパンタグラフ構造で、体重(50kg~ 100kg)にあわせてスプリング力の調整も可能。また平坦路ではサスペンション機能をオフにし、3段階のシート高で固定することもできた。 ◆パジェロ自慢のコンビネーション(3連)メーターは、初期モデルは油圧計/傾斜計/電圧計の配置となる。のちに高度計/傾斜計/デジタル内外気温計に変更された。 ◆パジェロは改良に伴って搭載エンジンも変わるが、初期のフラッグシップが写真の4D55型2.3Lディーゼルターボ(95ps/18.5kg-m)。ポルシェやフィアットにも採用された三菱自慢のサイレントシャフトが、ディーゼルの宿命とも言える振動や騒音を低減。