岡山の森、現代アートで観光振興…初の芸術祭を12市町村で開催
自然、観光地、食など地元の素材を絡めて、「岡山ならでは」の作品をちりばめている。活性化のタネを発掘する地方型芸術祭の王道と言える。長谷川さんは「アートは土地の物語を見つけたり、魅力を可視化したりできる。見逃していた資源に気づき、生きるための『新しい資本』を作るヒントにもなった」と胸を張った。
会場の岡山県北部は、岡山市や倉敷市といった県南部に比べ、産業が乏しく、過疎化が著しい。「森の芸術祭」は、多くの過疎地域での芸術祭と同様に、観光誘客の期待を背負っている。
伊原木隆太知事は「交通の便が良くない地域だが、成功する可能性はあると思った」と話す。世界中から70万人を超える人が瀬戸内海の島々を訪れる3年に1度の「瀬戸内国際芸術祭」などの成功例が後押しとなったという。しかし、継続的な開催については「来場者数や評判、地元へのインパクトを見て、総合的に判断したい」と慎重だ。
実際に単発で終わった芸術祭もある。茨城県北芸術祭(2016年)が一例で、「持続的な地域の発展にとって真に効果的であったかどうか曖昧」というのが理由だった。
たしかに芸術祭は一過性のイベントだ。「ハレ(非日常)」の効果を、いかに開催期間以外の「ケ(日常)」に波及させられるか。芸術祭の成否のカギは、閉幕後にもあると言える。