猫の魅力 多彩な表現 江戸から現代100点展示 北茨城の県五浦美術館
日本美術に登場する猫を題材にした作品を集めた企画展「猫を愛(め)でたい」が、茨城県北茨城市大津町の県天心記念五浦美術館で開かれている。チョウやボタンと組み合わせた江戸時代の吉祥画から、現代作家による猫をモチーフにした絵画や立体など100点を紹介。愛らしくも神秘的な猫の魅力を、多彩な表現を通して伝えている。 本展は、ペットとして人気が定着し、今やアニメやキャラクターにも取り入れられるなど身近な存在の猫を日本美術から捉え直そうと企画。浮世絵をはじめ長寿を願う吉祥画、近代の日本画、彫塑や陶芸作品など、江戸から現代に至る猫を題材とした作品を一堂にそろえた。 江戸時代の絵画では、司馬江漢らがチョウと猫を組み合わせて描いた吉祥画のほか、禅僧の仙厓義梵(せんがいぎぼん)が猫をモデルに描いたとされるユーモラスな虎図を紹介。さらに江戸時代末に活躍した歌川国芳の浮世絵も存在感を示す。「見立東海道五拾三次 岡部 猫石の由来」は、迫力のある化け猫を背景に、妖(よう)力を持った猫が2本足で立って踊る姿が愛嬌(あいきょう)たっぷりに描かれている。 明治期の絵画は、岡倉天心(覚三)が設立した日本美術院の作家らによる近代日本画を主体に構成。茨城県ゆかりの画家では、明治後期に北茨城・五浦の地で研さんを積んだ下村観山、菱田春草、木村武山(笠間市出身)の作品を並べている。このうち春草は猫をモチーフに数々の傑作を残したことで知られ、展示作の「黒猫」は、輪郭に沿って毛並みを精緻(せいち)に表現するなど巧みな技が発揮されている。 ほかに、近現代に活躍した彫刻家の朝倉文夫、木内克(水戸市出身)らの彫塑作品、現代陶芸家の田崎太郎氏(笠間市在住)によるこま犬の面影をたたえた作品も見どころとなる。 同館の木内智美首席学芸主事は「猫が歴史的にどう描かれてきたかを知っていただくとともに、多彩な表現を楽しんでほしい」と呼びかけている。 12月8日まで。月曜休館。同館(電)0293(46)5311。
茨城新聞社