家族と向き合えぬまま…震災で妻と息子を亡くした男性 生きづらさ感じる人が安心できる“居場所”を 2人の思い形に
長く教員を務めていた岩手・陸前高田市の男性が、6月24日に不登校やひきこもりで悩む人が集える施設を開所する。その施設は、東日本大震災で亡くなった妻と息子への思いを形にしたものだった。 【画像】家には鍵をかけず、誰でも利用可能に
安心できる“居場所”を作る
陸前高田市の中心部に4月に完成した「虹っ子の家」。 木造平屋建ての温もりを感じるこの施設は、生きづらさを感じる人たちが集える場所だ。 施設には相談室や、畳が敷かれた小上がり、浴室などが整備されている。 また、ホールは集会所のように、来た人がゲームをしたり話し合ったりできるようなスペースになっている。 運営するのは佐々木善仁さん（74）。佐々木さんは「虹っ子の家」が、生きづらさを感じている人たちがゆったりくつろげる場所と考え、「不登校やひきこもりで悩む人たちの居場所になれば」と話した。 佐々木さんがこの施設を造ったのには“ある理由”があった。
家族と向き合えなかった後悔…
35年間、教員として県内の小学校に勤務していた佐々木さん。 佐々木さんの転勤にともなう引っ越しと転校で、次男の仁也さんは中学2年生のころから学校に通わなくなった。 その後、通信制の高校を卒業したものの、18歳からは自分の部屋にこもるようになった。 当時の自分を「学校人間で、家庭を顧みない人間だった」と振り返る佐々木さん。 不登校だった仁也さんとはほとんど関わらず、妻のみき子さんに任せきりだったという。 「退職したらちゃんと向き合おう」と思っていたという佐々木さん。しかし、定年退職を月末に控えた2011年3月11日、東日本大震災が発生した。 あの日大きな揺れを感じながらも、仁也さんは部屋から出てこなかった。 海から約2kmの場所にあった自宅は家ごと津波に飲み込まれ、仁也さんは最後まで避難を促したみき子さんと津波の犠牲になった。 当時、陸前高田市の広田小学校の校長だった佐々木さんは、自宅の被害については学校と教え子を守ることで頭がいっぱいで、考える暇もなかったという。 学校の対応に追われ、実際に家族の安否を確認したのは、震災発生から約10日後、遺体安置所で2人と対面した。 その時、佐々木さんが感じたのは、生きているうちに家族と向き合えなかった後悔だった。 佐々木善仁さん: 向き合う時にきちんと向き合った方が良い。後でっていうのはうそだって
