「よくない事は、いつも私のせいにする!」 モラハラ夫が、何でも人のせいにする「5つの理由」
病気になるのも私、子供の成績が悪いのも私のせい
「それ以外にも、夫が風邪を引いた時、『体調管理は妻の責任だ。俺が風邪を引いてしまうのは栄養管理が悪いからだ』と責められました。子供の成績が今ひとつの時も『母親として子供の勉強の管理ができないのは母親失格だ』と私を責め立てます。最初は夫の言うことはおかしいと思っていたのですが、いつも責め立てられ続けると、次第に『私が悪いのかもしれない』と思うようになり、自分を責め続ける日々が続きました。」 Tさんの夫は「お前が変われば、すべてうまくいく」と言い続け、Tさんを精神的に追い詰めていきました。Tさんは徐々に自己評価を下げ、夫の言うことを受け入れるようになっていったのです。 繰り返し責められると「自分が悪い」と思ってしまう理由には、いくつかの心理的な要因が関係しています。まず、責められると対立を避けようとする心理が働き、自分が悪いのかもしれないと考えることで、辛い状況から逃げることができます。 さらに、同じことを繰り返し言われると、それが真実だと思い込むようになる効果もあります。最初は疑問に感じていても、何度も責められることで、その言葉が次第に自分の中に染み込み、自分が悪いと感じるようになるのです。繰り返し責められることで自己評価も低下し、自分よりも相手の言葉を信じるようになります。こうした関係の中では、相手の意見に従うことが最善だと思ってしまうため、いつの間にか自分が悪いと思い込んでしまうのです
土下座の強要からこの関係はおかしいと目がさめる
「ある時夫が感染性胃腸炎にかかった時のことです。吐いたり下痢をしたり、とても辛い状況だったのはわかります。でも体調が回復したあと夫は『お前の健康管理が酷すぎる。だから俺があんなに辛い目にあったんだ。お前は俺に土下座して謝れ』と私の頭に手を置いて床に押し付けたのです。その瞬間、私の心の中でずっと張り詰めていた我慢の糸がプツッと切れました。私はその場で『もう私はあなたと暮らすのは無理です。家を出ていきます。離婚してください』と言い、すぐに荷物をまとめ始めました。」 ずっと夫からの暴言に耐えていたTさんですが、この瞬間に離婚を決意したのは、長い間積み重ねられてきた耐えがたい経験や感情が、夫の一言で一気に爆発したからだと思います。 「お前の健康管理が酷すぎる」という夫の言葉と、それに続く土下座を強制されるという行為は、まるで自分の尊厳や存在そのものを否定されたかのように感じられたのでしょう。私は自分自身の尊厳を守るために、これ以上夫と一緒にいることはできないと直感的に感じたのだと思います。この瞬間、心の中でずっと抱えていたものが、一気に表面化し、家を出ていくという行動に出たと思います。」 モラハラ夫と別れを決める瞬間は人それぞれですが、この出来事がTさんにとっての決断の時でした。自分が夫にされていることは普通ではないとやっと気がついたのです。 うまくいこないことは何でも妻のせいにする夫。そんなもんだと思い始めていたTさんでしたが、土下座を強要されたことで「これは普通じゃない」と気づき、家を出る決心をするまでの経緯をお届けしました。 ▶続きの【後編】では、無事に家を出たTさんですが、2~3カ月したころに「ある衝動」が襲ってきます。モラハラ被害者にはよくある心理だといいますが、その正体とは?
モラハラ/HSP専門カウンセラー 麻野祐香