LiSAが語る、13年にわたり大切にしてきた、人と混ざり合うことで生まれる化学反応
これは私のために作られたメロディと音楽なんだと強く実感した「ブラックボックス」
─しかも今年はデビュー13周年を迎えるタイミングということで、『ROUTE13』という年間テーマを掲げていろいろ動いている。ライブはもちろんのこと、「HELLO WORLD」を筆頭に順調に新曲を発表し続けていますが、8月21日にリリースされるニューシングル『ブラックボックス』……これはかなりエグい内容ですね。 LiSA:あははは、ありがとうございます! ─表題曲はテレビアニメ『NieR:Automata Ver.1.1a』(以下、『ニーア』)第2クールのオープニングテーマとして、amazarashiの秋田ひろむさんとのコラボレーションによって制作された1曲です。 LiSA:『ニーア』という作品に関して、私はまずゲームでその世界観に触れていたんですが、その後のテレビアニメ第1クールではAimerちゃんとamazarashiさんがオープニングテーマとエンディングテーマを担当していて。作品の内容や絵のタッチを知っていたので、すごくぴったりだと思っていたんです。なので、第2クールのオープニングテーマのお話をいただいたときに、まず「私がやれることって何だろう?」と考えました。amazarashiさんとご一緒させていただくことに関しても、私は悲しみを歌う際にはどちらかというと大声を上げて発散するタイプですけど、amazarashiさんは内に秘めた爆発力というか、それを背負っていく覚悟を持って歌われている印象があって。そういったタイプの異なる表現者を『ニーア』という作品を通じて結びつけてくださったことに、「また新しいことができる!」とワクワクしたんです。 ─では、楽曲制作に際してのやり取りというのは? LiSA:秋田さん自身がゲームの頃から『ニーア』に深く関わってらっしゃったので、作品側からの秋田さんへの信頼がとても厚くて。なので、アニメサイドからのオーダーも“9S(ヨルハ九号S型)”の気持ちを歌ってくださいということ、「あとはより深く知ってくださっている秋田さんにお任せします」という感じでした。私も秋田さんの作られている作品に対しての信頼感がとても強かったので、私からのオーダーはほとんどなかったです。 ─そうだったんですね。楽曲を聴くと、イントロからAメロで感じるポストロック的な浮遊感が非常に秋田さんらしく、Bメロからサビにかけて熱が高まっていくところにはLiSAさんらしさ強く打ち出されている。両者の魅力が最良の形で凝縮されていると思いました。 LiSA:よかったです。最初に秋田さんからいただいたデモ音源は、秋田さんの声で歌われたすごくシンプルなバンドサウンドで、amazarashiさんそのものといった感じで。秋田さんの声が乗るからこその説得力があったし、これを私の声に置き換えたときにちゃんと秋田さんが込めた思いを私が表現できるのか少し不安でしたけど、出羽(良彰)さんのアレンジによって女性の声にぴったりなテイストにできたのかなと思います。レコーディングにおいても「秋田さんが歌ったほうがいい」ってならないように、「私が歌うためにはどうしたらいいかな?」ってすごく練ってレコーディングに挑んだんですけど、いざレコーディングブースに入って歌ってみるとすごく体に馴染んでいることに気づいて。ってことは、これは私のために作られたメロディと音楽なんだと、そこで強く実感しました。 ─歌い方に関してもAメロでは感情を抑えているところから、サビに向けて熱をどんどん高めていき、Dメロで一気に爆発させている。歌詞に沿っての感情表現かなと思いますが、そのへんはどこまで意識的でしたか? LiSA:まず、仮歌を録るタイミングにキーの設定をしたんですけど、秋田さんが表現したい喪失感をAメロでいかに表現できるか、それに合ったキー設定はすごく大切にしました。その上で、自分が歌うことで表現する喪失感とか、サビで悲しみが増していく感覚とか、おっしゃってくださったDメロで爆発させるためのタメとか、それらをベストな形で表現できるようなキー設定と歌のパワーバランスは、設計図を作っている段階ではかなり意識していたんですけど、実際ブースに入ったら曲に導かれるまま歌っていたんですよ。そうやって導かれたのは、制作に関わったみんなが歌を大切にしようとして注力してくださった結果だと思うので、これは素直に従って歌った結果なんです。 ─なるほど。歌詞を読んでいるだけでも胸が締め付けられるのに、それをLiSAさんの歌で表現されることでよりまっすぐ響いて、感情がぐちゃぐちゃになるんですよ。 LiSA:私も歌っていて、とにかくつらいです(笑)。誰かとの別れに対して後悔を持っていて、それをずっと心の中に閉じ込めてしまっている人は、よりそう感じるんじゃないかと思います。 ─そういう楽曲を歌う際、LiSAさんが心がけてることってあるんですか? LiSA:あの……自分の感情がコントロールできないくらい泣いたことってありますか? 私はそういうタイミングがたまにあるんですね。ひとりになったとき、急にいろんな後悔が押し寄せてきて声を荒げて泣くんですけど、バーって泣いたあとにふと空っぽになる瞬間が訪れるんです。「ブラックボックス」を歌うときはその感覚に似ていて、意図して緩急を付けて歌うというよりは音と言葉に引っ張られていって、クライマックスの〈殺してくれ〉で空っぽになる。こんな話をすると情緒不安定な人みたいに思われるかもしれませんけど(笑)、そういう表現を自然にしているなと思います。 ─そういうお話を聞くと、LiSAさんにとって歌うことは呼吸するのと同じように、日常生活の中にある“あたりまえの行動”のひとつなのかもしれませんね。 LiSA:そうですね。なので、音楽に注力するときは常に自然体というか。ライブやレコーディグの前日まではきちんと計画をして練習するんですけど、いざ本番になったら何も着飾らず素直になってしまうんです。 ─だからこそ歌が聴き手の心にスッと飛び込んでくるし、アーティストとしての信頼にもつながっているのかなと。 LiSA:ありがとうございます。でも「本当はこういう表現がしたいのに!」と、頭で考えていたことが感情に負けてできないことも多いので、まだまだ訓練が必要ですね(笑)。