「不器用なクマ科なのにパンダはなぜ竹を握れるのか?」直木賞作家・千早茜の「傷」にまつわる愛読書【私の愛読書】
――センセイとツキコさんが野球の話で喧嘩をする場面がありますよね。喧嘩をする時でさえ微笑ましい2人が印象的でした。 千早:あのシーンかわいいですよね。あの喧嘩のしかた、すごくかわいい。あと、ツキコさんと体を重ねることに関して、センセイが昔教壇で平家物語を読み上げたような毅然とした口調で、「できるかどうか、ワタクシには自信がない」と言う場面も好きなんです。一周まわった男の人のかわいさって、こういう感じで出るのかなぁ、と。 ――センセイとツキコさんの関係は、相当レアですよね。 千早:レアですね。大抵、もっとお互いの狡さや欲が出てきて、ぐちゃぐちゃになっていくのですが。 ――挙げていただいた作品はどれもジャンルがバラバラでしたが、日頃読まれる本の中では、どのジャンルが一番多いですか。 千早:ノンフィクションが多いですね。医学書も、日頃から趣味でよく読んでいます。最近、猫を飼ったので、猫の病気や飼い方の本なども読んでいて。猫の骨、猫の病気、猫のフンや尿など、ちゃんと図解を確認して、何かあった時のために健康な状態と危険な状態の違いを色々と調べています。 知識が入ってくると安心するし、自分にはない言語化能力に触れるのは、文章を書く上でも参考になることが多いです。 取材・文=碧月はる、撮影=金澤正平