『セクシー田中さん』ドラマの原作改変、悲劇の背景を考える
出版社に不信感を持つ原作者も
漫画や小説がドラマ化される際、契約は大半が口約束。文書を作らない。これもトラブルの火種になっている。やはりコンプライアンス軽視の表れだろう。 漫画『ブラックジャックによろしく』や同『海猿』がドラマ、映画化された漫画家の佐藤秀峰氏は2月2日、コンテンツ投稿サイト「note」に出版社側への不信感を書き連ねている。 「出版社はすみやかに映像化の契約を結んで本を売りたいのです」(佐藤氏のnote) 原作者の思いは二の次ということか。事実、現在の出版社に巨額の利益をもたらしているのはライツビジネスだ。 漫画界屈指の論客として知られ、『海猿』ではドラマ化と第4弾までの映画化の過程で蓄積した不信感から制作側のフジテレビと絶縁を宣言するに至った佐藤氏は、今回の問題の根底に横たわる重大な指摘も行っている。 「漫画家の中には出版社を通じて映像化に注文を付ける人もいますが、出版社がそれをテレビ局に伝えるかどうかは別問題です。面倒な注文をつけて話がややこしくなったら企画が頓挫する可能性があります」(同) そう、芦原さんが小学館を通じて日テレに出した条件はどこまで伝わっていたのか。条件は共有化されていたのか。 いずれにせよ、芦原さんは作品の世界観を守るため、自分で脚本まで書き、その理由の説明も自らブログで発信するしかなかった。なぜ、孤軍奮闘を強いられたのか。才能に溢(あふ)れたクリエイターの最期にしては悲しすぎる。 小学館第1コミック局の編集者一同は2月8日、「二度と原作者がこのような思いをしないためにも、『著作者人格権』という著者が持つ絶対的な権利について周知徹底し、著者の意向は必ず尊重され、意見を言うことは当然のことであるという認識を拡げることこそが、再発防止において核となる部分だと考えています」という声明を出した。 しかし、これからのことを考えるのはまだ早いのではないか。小学館は芦原さんの同一性保持権の堅持に向け、どう努力したのか。それを調査の上で公表するのが同社の社会的責務だろう。