ミリオネア流出、中国と英国で顕著-移住先トップはアラブ首長国連邦
(ブルームバーグ): 富裕層の移住計画に関する新たな報告書によると、英国は今年、中国を除く世界のどの国よりも多い9500人のミリオネアを失いそうだ。
ヘンリー・アンド・パートナーズの「ヘンリー・プライベート・ウェルス・マイグレーション・リポート」によれば、これは2023年に英国を離れたミリオネアの倍以上。これより多いのは今年1万5200人が去るとみられる中国だけだ。
ヘンリーのプライベートクライアント担当グローバル責任者ドミニク・ボレク氏は18日の発表資料で、「世界が地政学的緊張や経済的不確実性、社会的激変という完璧な嵐と格闘する中で、記録的な数の富豪たちが足で投票している」と指摘した。
このリポートの数値は、ミリオネアの人口がどこで増え、どこで減っているかを反映させた純入出国者数に基づいている。ヘンリーの調査パートナー、ニュー・ワールド・ウェルスは移住データや投資移住プログラムの統計、ウェルス業界の仲介業者とのインタビューに基づいて移住者数を推定した。
英国から超富裕層が出ていく傾向が最近強まったのは、英国の欧州連合(EU)離脱前後に始まったトレンドの加速だ。リポートによると、英国は17-23年にミリオネア1万6500人を移住で失った。数十年にわたり欧州やアジア、アフリカ、中東からの富裕層が主にロンドンに集まっていた流れが逆転している。
人気の移住先
英国では保守党と労働党が共に英国在住の外国人富裕層に対する優遇税制の廃止を公約に掲げ、労働党のスターマー党首は富裕層への課税をさらに強化する方針だ。
ミリオネアの移住先トップはアラブ首長国連邦(UAE)。今年は6700人が移り住む見通し。個人所得に対する課税のないUAEはインドや中東の富裕層に長年移住先として好まれているほか、ロシアがウクライナで始めた戦争をきっかけにロシア人数千人を受け入れた。
リポートによれば、ロシア人の流入はこの1年で鈍化したものの、欧州人や英国人の移住が増えたという。ヘンリーによると、UAEのドバイに住むミリオネアの数は過去10年間で78%増加した。