センバツ21世紀枠候補・大洲(愛媛)実力上位校を撃破した合言葉は「知行合一」
第96回選抜高校野球大会(以下・センバツ)の出場全32校が、いよいよ1月26日に発表される。21世紀枠は17年ぶりに地区別候補9校中2校選出へと戻るが、四国地区では愛媛県立の大洲が初の地区候補推薦を受けた。 【動画】24年も逸材が勢ぞろい!今度はロマンある選手が多数?! 学校は、冬場に幻想的な風景が繰り広げられる肱川あらし、鵜飼や鰻料理など観光・商業都市の1つ、愛媛県大洲市の中心街に位置する。1901年、旧制宇和島中大洲分校として創立された伝統校だ。OBに2014年ノーベル物理学賞受賞の中村 修二博士などを輩出し、南予地区屈指の進学校として知られている。 大洲中時代の1928年(昭3)、四国内全登録校が一堂に会した夏の四国大会では徳島商、城北中(高知小津・前身の1つ)に競り勝ち準決勝に進んでいるが、春夏通じて甲子園出場経験はない。主な野球部OBには強打の内野手として1997年にヤクルトからドラフト4位指名を受けた大山 貴広や、拓殖大を経て現在・シティライト岡山で3シーズン目を迎える左腕・大谷 亮斗投手がいる。 現在の部員数は2年生18人(うち女子マネージャー1人)、1年生10人(うち女子マネージャー2人)の計28人。チームを率いる、就任3年目・35歳の黒木 太雄監督(松山東OB)は、これまで今治西、新居浜商で副部長・部長職を歴任し、今治西時代の2015年には代行監督としてセンバツ1勝をマークしている。 チームは、昨秋愛媛県大会で8強入りしたが、大きなターニングポイントとなったのは北宇和戦。夏の愛媛大会・伊予農戦で15奪三振の快投を演じた左腕・佐々木 了投手(2年)ら、ポテンシャルが高い選手をそろえる北宇和との本戦代表決定戦に勝利したことだった。 この大一番を前に、黒木監督は北宇和・佐々木投手のクイックに難がある点を見抜き、試合前に「積極的に盗塁を仕掛けていこう」と指示。これに対し選手たちは2番・神岡 友将内野手(2年)の3盗塁をはじめ、計13安打6盗塁と見事な攻略で6対2で快勝した。結果的に5回コールドの7対17で敗れた準々決勝の小松戦でも、3回に打者13人を送り込み7点を先制している。伊予大洲藩に仕えた時期を持つ陽明学者・中江 藤樹の唱えた「知行合一」を伝統的教条とする同校の教えを体現し、実力上位を攻略する確かな力を持っている。 中心選手は1番・川元 悠太外野手(2年)から神岡、主将の大野 航太郎内野手(2年)、今宮 颯斗内野手(2年)と続く上位打線。この4人は、いずれも昨秋公式戦4割前後の打率をマークし、公式戦チーム打率も.384。また、左腕エースの宮内 隆乃介投手(2年)は球速こそ130キロに満たないが、低めへの制球と多彩な変化球を操り、公式戦20回を投げて22奪三振をマーク。防御率こそ5.05だが、県大会1回戦では野村を6回完封(コールド勝ち)している。 大野主将は「このチームは昨年から投げている宮内を中心に、守備からしっかりして点につなげていく特長がある。小松戦では流れを変えるプレーができなかったので、この冬はそこを修正する部分と、秋に良かった打撃をウエートトレーニングでさらに力強くすることに取り組んでいます」と語る。 「どんな相手でも挑戦者らしく粘り強く」をモットーとする大洲は、長浜の浜辺清掃などの地域貢献活動や、夏の愛媛大会上位進出も見据えた鍛錬の日々を過ごしつつ、26日の運命の日を待つ。