収益不動産の相続問題…「資産のリスト化」が着地の明暗を分ける納得の理由【弁護士が解説】
オーナーの目線での「分析レポート」を作成しておく
不動産投資で資産の拡大を狙うのであれば、ご自身のあとの世代のことを考慮したうえで、「最後の仕上げ」まで行うことが大切です。その際、筆者が相談者の方に作成をご提案しているのが、オーナー目線での「分析レポート」です。 不動産投資をされてる方の場合は、物件を建築したときと運営をスタートしたときが、もっとも多く知識や情報が集積するといえます。 土地を決めて物件を建築する場合、建設会社や不動産会社の担当者とともにターゲットとなる賃借人の属性を考えます。「ここのエリアなら学生が多いからワンルームだと借り手が多いのではないか」「ここは郊外の落ち着いた土地だから、家族世帯を狙うのはどうか」ということを考え、想定し、アパートやマンションを経営しているわけです。その点を考慮せずに経営することはあり得ませんから、建築した人自身が「物件の強みを知っている」ということになります。 さらに、先祖代々の土地であれば、土地の歴史も把握しているでしょう。「この辺は農地だった」「あの家とあの家は親族でつながりが深い」「あの家とあの家は代々仲が悪い」等の事情も、不動産投資をやるうえでは意外と重要な情報なのです。 不動産を売却する際には、隣地の方との関係性で値段が上下する可能性があります。そのため、隣地との人間関係、接道・境界関係なども把握し、記録を残しておくのです。実際問題、過去に隣家と裁判をやったという場合もあります。それらを残しておけば、相続人の不動産承継も非常にやりやすくなるのです。 逆にいうなら、受け継ぐ予定の方々は、所有者の方が元気なうちにこれらをヒアリングしておくべきだと思います。そうでないと、100の価値を100発揮できないことも起こり得ます。このような細かい部分まで踏み込んで準備できれば、万全だといえるでしょう。 山村暢彦 山村法律事務所代表 弁護士
山村 暢彦