収益不動産の相続問題…「資産のリスト化」が着地の明暗を分ける納得の理由【弁護士が解説】
地道な「書類整理」「リスト作業」が極めて重要なワケ
では、無事に相続を行うためには、どんな準備をしておけばいいのでしょうか? 筆者が相談を受けたとき、まず最初に行っていただくようお勧めするのは「所有不動産リスト」の作成です。 アパートオーナーの場合は、まず不動産関係の書類をしっかり整理することからはじめます。さすがに書類が行方不明になっている方はいないと思いますが、書類ボックスなどへ適当に詰め込んだままの方は多いのです。 しかし、「リストの作成=お金を生む行為」というぐらいの認識を持つべきだといえます。なぜなら、めちゃくちゃな状態で相続人に引き渡せば、相続人は書類の整理のために専門家を頼るしかありません。筆者も仕事柄「書類の山」を手渡されることがありますが、手間が多くなるぶん、見積も高くなりがちです。きちんと整理されていれば費用が抑えられるのに、本当にもったいない話です。 書類の整理を面倒に感じる方は多いと思いますが、それ自体が経済的な効果を生む行為だと考え、ぜひとも頑張っていただきたいと思います。 必須となるのは、住所地番といわれる不動産の住所以外の特定情報、売買契約書建築関係資料あたりです。購入したブランド品を売る際、購入時の箱や保証書が必要になるのと同じだといえば、わかりやすいでしょうか。不動産も、その内容を説明したものが必要だということです。 不動産の外観を見ても、構造がどうなっているか、そもそも信頼できる建物かどうかわかりません。そのため、ブランド品の保証書と同様に、どういった経緯で建てたものなのかがわかる「付属資料」を集めておくというのが基本です。 さらに、融資が残った状態で所有者が亡くなる可能性もあるので、融資関係の資料も必要です。アパート経営をする場合は、だいたい金融機関から借り入れしますので、その資料関係をとりあえず集めておくのです。「どの銀行から/いくら借りて/利率はいくらで/どういう契約内容になっているのか」といったことがわかるようにしておきます。 そして、さらにあると助かるのは、「当時の担当者はだれか」ということです。人事異動で変更となっている可能性もありますが、銀行関係の資料もしっかり取っておきましょう。 アパート経営ですから、賃借人関係の「賃貸契約書」も必要です。 昔ながらの借家によくみられるのは、契約書もなく、大家さんがなんとなく集金に足を運んでいるケースです。このような状況を放置していると、相続人は本当に大変です。少なくとも、「家賃をいくらもらっているのか」「受け取った家賃はどこに記録しているのか」を、明らかにしておくべきです。そうでないと「友達だからタダで借りていた」などと言い張られ、出ていってもらうために100万円、200万円といったお金が必要になるかもしれないのです。