生田斗真×中村倫也のバディに注目、劇団☆新感線の最新作「バサラオ」を観る
■ 「生田斗真全部盛り」状態、最後まで怒濤の展開
生田斗真、中村倫也、古田新太などが出演する、劇団☆新感線の新作公演『バサラオ』。10月の大阪公演に先駆けて、7月7日に「博多座」(福岡市博多区)で開幕。「美貌で世界征服を目指す」という美しき悪漢となった生田と、それを支える中村の、はなやかでスリリングなバディぶりが見ものだ。 【写真】劇中カットより、鋭い表情をみせる西野七瀬 ミカドと幕府が対立する世界。幕府側の密偵だったカイリ(中村)は、大勢の女たちを従える美しき男・ヒュウガ(生田)と出会う。自分の思うままに振る舞う「バサラ」の生き方を望み、そのためなら幕府も潰すと言い放つヒュウガ。カイリは、そんな彼の軍師となることを決意する。そして2人はゴノミカド(古田)を担ぎ上げ、数々の権力者&強者たちと対峙しながら倒幕を目指していく。 この公演が、現在39歳の生田の「39(サンキュー)」公演と銘打たれているだけあり、まさに「生田斗真全部盛り」状態だ。登場シーンから観客の度肝を抜いたのにはじまり、大勢のダンサーを引き連れて歌うかと思えば、踊りのように華麗なアクションも決める。そしてまさに「良いのは顔だけ」と思えるほど、周囲の人間をだまし裏切っていく、完全無欠の悪人ぶりが圧巻だ。
それを支える中村も、ヒュウガと周囲の人間をつなぐ役として、縦横無尽に立ち回る。無邪気にヒュウガの野望に付き合ってるようだったのに、物語が進むうちに、「おや?」と思うことがいろいろと浮かび上がってくる。まさにこの物語のキーマンだ。ところどころで披露する歌声も、ミュージカルの経験が多いだけあり、非常に耳に心地がいい。 そして2人が対峙するゴノミカド役の古田も、怪しい関西弁でまくしたてるオッサンぶりが強烈だ。笑いを生み出していく一方で、シリアスなシーンでは、立っているだけでも「乗り越えられない壁」のような威圧感を生み出すことができるのは、さすがベテランの技。登場人物のなかでは、もっとも信頼がおけるけど、ある意味一番狂ってる女戦士・アキノ(西野七瀬)のキャラクターが印象に残った。 歌と踊りとアクションだけでも楽しめるけど、最後の最後まで怒濤の展開で、ストーリーの仕掛けも見応え十分。単純な勧善懲悪とは違う、複雑な気持ちなのに爽快感のある幕切れまで、文字通り息つくいとまもない世界だ。カーテンコールも、一回目の時点で早くも立ち上がる観客が出るほど。博多では半分ぐらいの人だったけど、大阪は多分総立ちになる予感・・・実は大阪公演は、チケットの発売はこれから! どうか今から争奪戦に備えて、カイリなみに策を練ってほしい。 脚本は『天元突破グレンラガン』『キルラキル』の脚本でも知られる中島かずき。演出は新感線主宰のいのうえひでのり。福岡公演は8月2日まで。その後東京公演をはさみ、大阪公演は10月5日~17日に「フェスティバルホール」(大阪市北区)にて。チケットはS席1万6500円、A席1万2500円、ヤングチケット(22歳以下)2200円で、9月1日から発売開始。 取材・文/吉永美和子