「公職選挙法」のせいで日本は「小物政治家」ばかりになる…行政評論家が提案したい「解決策」
VIPマネジメントの例を考える
だが、筆者がここで言いたいのは、有能な政治家が、軽微なルール違反で足を踏み外して政界から(一時的にでも)退場させられ、国益に損失となることのないよう、改めて政治家のルール違反を防ぐ仕組みづくりをすべきだ、ということである。 前編でも触れたが、現在、企業などでは、社内で法令遵守の体制を作り、外部の専門職(士業など)を含め多くの人が関与しているのに、政治分野では、組織や体制の面からみてもあまりに脆弱で、心もとない状況のまま放置されている。もはや「脇が甘い政治家が悪い」、「やればできる」の根性論では済まない状況になっているのではないだろうか。 その現状を打開する方法を考えるにあたり、ここで大きく視座を転じて、他の職業の話をしたい。プロスポーツ選手や、文化人、芸能タレント……こういった一般人にはない才能を持っている人たちは、限られた時間をその才能を用いた活動に充てるため、契約とか経理とか交渉とか細かいことは、その道のプロ(交渉代理人や税理士など)に任せていることが多い。 より具体的に言おう。たとえば大リーガーの大谷翔平選手、将棋の藤井聡太名人のようなVIPは、自身が持つ特別な才能によって多額の収入を得ていると思われるが、本業の合間を縫って自ら税法を勉強して、脱税しないように確定申告しろというのは酷な話だ。当然、本人が野球や将棋に集中できるように、マネジメント会社や税理士ががっちりカバーしているだろう。 話を元に戻そう。もはや政治の世界でも、こうしたVIPのマネジメントの例にならって、複雑化する政治資金の管理や選挙違反の防止については、十分な知識と経験を持った専門職が責任をもって政治家に伴走することが必要な時代ではないだろうか。あわせて、政治家本人は、こうした法令遵守の負担から極力解放し(もちろんゼロにはならないが)、支持者からのヒアリング・政策立案・調整などの本業にできる限り注力させたほうが建設的だと筆者は考える。 すでに選挙関係では、当選に向けた戦略・戦術を授ける選挙参謀の役割を請け負う、選挙プランナーとか選挙コンサルタントなどと呼ばれる職種が存在し、実際にそういう人を迎え入れている陣営もある。また、政治資金の管理に関しても、多忙な政治家本人がすべてを処理しているわけではなく、秘書や後援会関係者が担っていることも多い。