【チキンカツ玉子とじ】思いがけず本気の食事になってしまった、老舗酒場の絶品チキンカツ玉子とじ:パリッコ『今週のハマりメシ』第151回
ある日、あるとき、ある場所で食べた食事が、その日の気分や体調にあまりにもぴたりとハマることが、ごくまれにある。 【写真】いわし胡麻漬けもうまい それは、飲み食いが好きな僕にとって大げさでなく無上の喜びだし、ベストな選択ができたことに対し、「自分って天才?」と、心密かに脳内でガッツポーズをとってしまう瞬間でもある。 そんな"ハマりメシ"を求め、今日もメシを食い、酒を飲むのです。 * * * 最近、仕事の関係で五反田に行く機会が多い。先日も五反田で仕事が終わり、せっかくにぎやかな街に来たんだし、軽くひとり飲みをして帰ることにした。 どこかおもしろそうな店はないかな? と歩いていると、「たこ安」という店に目が留まった。大衆的でかわいげのある店名がいいし、「関西即席 一品料理」というフレーズも気になる。 近寄ってみると看板に「創業昭和24年」と書いてある。かなりの老舗だ。それでいて最大50名までの宴会も可能らしく、「大画面テレビ完備!マイクもご用意できます」などと書いてあって、気になる要素が満載。これはもう、入ってみるしかないだろう。 左に階段、右にエスカレーターという珍しい作りになっていて、「右側のエスカレーターをご利用ください」とあるので、素直に従う。 2階にたどり着くと、ビルのなかにあることに違和感しかない重厚な看板とのれん、そして木製の引き戸。これはきっとあれだ。かつては独立店だった店が、再開発でビル内店舗になったパターン。いい。すごくいい。 のれんをくぐって店に入ると、いきなり真正面に、椅子に座ってTVを見上げる、ご主人と思われる男性。「いらっしゃいませ」と迎え入れてくれ、女性の店員さんが席へと案内してくれる。 まずは酒。大好きな「ホッピーセット(白)」(税込495円)があったので、すかさず注文。お通し(400円)は、もやしとザーサイとしらたきのあえものか。うんうん。同時に到着したホッピーで、さっそくのどを潤す。 僕が通されたのは、テーブルが数席のコンパクトな部屋で、独立した空間だ。けれども両サイドに、広めのテーブル席や座敷席があるような雰囲気はする。また、ご主人の持ち場は入り口前が固定らしく、はっきりとは見えないけれど、調理場には別に料理人さんがいるらしい。注文を聞いてくれるのは、僕を案内してくれた店員さん。こういう全容の見えない酒場って、なんだか無性にわくわくするんだよな。 メニューもなんだか特徴的。真横の壁に貼られたおすすめメニューには、「刺身盛り合わせ」のあとに「山芋ポテト」「生セロリ」「焼きとうもろこし」と続き、そのチョイスがおもしろい。 グランドメニューもかなり品数豊富。特に「なめろう」はリピーター続出の名物らしい。ほか、「大きさにビックリ!!」とある「串焼き盛合わせ」や「豚しゃぶサラダ」、「鶏もも焼きおろしポン酢」などが大プッシュされているが、そういえば、関西っぽい要素が皆無だな。「栃尾揚げ」や「稲庭うどん」なんていう、関西とはまったく関係ないメニューもあるし。いやもう、すでに好きすぎる。この店。 さて注文。今日の僕の気分はなんだろう。う~ん......「いわし胡麻漬け」(380円)と、「チキンカツ玉子とじ」(550円)で! いわし胡麻漬けは、酢締めにされた小イワシと野菜をあえ、たっぷりとごまがふられた小鉢。形をそろえて細切りにされたきゅうり、にんじん、大根、それから、ガリ。ちょっと珍しいスタイルだけど、ものすごくいいつまみだ。特にガリのピリ辛さと甘みが、酢締めのイワシとよく合う。
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