盲導犬男性のホーム転落死 「右手で胴輪」が意味することは?
本人の責任に転嫁しない
北海道盲導犬協会では、持ち手がどちらであってもホーム上では壁側を歩くよう指導しているという。もちろん、白線の外側に出ないというのは、盲導犬歩行に限らないルールだ。しかし、事故当時の状況はそうではなかった。これをひとえに品田さんとパートナーの責任とすることができるだろうか? 塩屋氏は「右手への持ち替えを認めていない協会であれば、今回の状況で事故が起きる可能性はあり得ません。持ち替えても安全だというのなら、それを自ら証明する必要があります。原因究明を避けていれば、他の形でも痛ましい事故が起きかねません」と語る。 品田さんが教えられた通りのことを試みた結果、事故にあってしまったのだとすれば、あまりに浮かばれない。ちなみに「両手持ち」を勧めている2団体の現役ユーザーは、全国に計約150人いるとされている。 視覚障害者団体の「日本盲人会連合」は、事故を受けた声明文の中で、次のように要望している。 <事故原因の究明にあたっては、本人の責任に転嫁しないことを前提に、盲導犬の使用並びに本人の歩行訓練の状況を含め事故原因を深く究明し、今後の施策に生かすこと> 「アイメイトを正しく使えば、ホーム上が特段危険なわけではありません」と塩屋氏は言う。「次のことを守れば、事故は絶対に起きません」。 (1) ハーネスを左手で脇を空けずに持つ (2)訓練と歩行指導で教えられた左側通行を守る (3)犬と平行して歩く (4)犬を(体で)押さない (5)犬より前を歩かない
-------------------------------------- ■内村コースケ(うちむら・こうすけ) 1970年生まれ。子供時代をビルマ(現ミャンマー)、カナダ、イギリスで過ごし、早稲田大学第一文学部卒業後、中日新聞(東京新聞)で記者とカメラマンをそれぞれ経験。フリーに転身後、愛犬と共に東京から八ヶ岳山麓に移住。「書けて撮れる」フォトジャーナリストとして、「犬」「田舎暮らし」「帰国子女」などをテーマに活動中