盲導犬男性のホーム転落死 「右手で胴輪」が意味することは?
今回のケースでは、右手でハーネスを持ってホームの左端を歩いた結果、品田さんが線路側すれすれに位置することになり、それが転落を招いた可能性がある。事故があった銀座線のホームは真ん中に線路があり左右にホームがある構造。左手持ちでキープレフト(左側通行)をしていれば、線路が左側になる進行方向では、白線の内側を犬が線路側に位置する形で歩くことになる。進行方向が逆の場合は人が外側になるが、線路から遠い左端の壁に近い側を歩くことになる。左右に線路がある“島型”のホームの場合でも、必ず犬が外側になる。 つまり、「左手持ち・左側通行」であれば、犬は危険を察知したら止まるなどの訓練を受けているため、犬が外側にいる限り、転落はまず起こり得ないし、人が外側であっても壁側を歩いている限りは安全だという理屈だ。 上記の理屈であれば、右手持ちでも右側通行をすれば安全ではないか? その通りである。北海道盲導犬協会の和田孝文訓練所所長は、両手持ちを推奨する理由を次のように説明する。 「当協会では、路上では建物側(道路から遠い側)に盲導犬、道路側に人が位置するということを原理原則としております。例えば、上から見た場合に右側に道路、その左側に歩道があるとします。この図で『下から上』に歩く場合は、左手にハーネスを持ち、建物側(左端)を歩きます。同じ歩道を逆方向(上)から歩いてくるとしましょう。右手に持ちかえれば、犬が建物側という原則がキープできます」 つまり、常に犬が道路から遠い側を歩道脇の建物に沿うように歩くことにより、安全が確保されるという理屈だ。この場合、右手持ちの時はキープライト(右側通行)、左手持ちの時はキープレフト(左側通行)と、通行区分を切り替えることが前提となる。 ところが、今回の事故直前の状況は「右手持ちの左側通行」になっていた。これに対し、塩屋氏は、持ち手によって右側通行と左側通行を切り替える判断は犬にはできないし、持ち替えによって視覚障害者自身の位置関係の把握にも混乱をきたすと指摘する。つまり、犬と視覚障害者が必ずしも実行できないことを教えているのではないか、というのだ。そして、それが今回の事故の直接的な原因だったとしている。