松本光平が移籍先にソロモン諸島を選んだ理由「獲物は魚にタコ。野生の鶏とか豚を捕まえて食べていました」
2019年にニューカレドニアのヤンゲン・スポートの一員としてFIFAクラブワールドカップに出場。コロナ禍の2020年5月にトレーニング中の事故により両目に大怪我を負うも、壮絶なリハビリを経て現役復帰。視覚障がいのあるサッカー選手・松本光平のその前向きな生き様は多くの人に勇気を与え、書籍『前だけを見る力』の刊行、テレビ番組「激レアさんを連れてきた。」への出演など大きな反響を呼んだ。昨年8月、3年3カ月ぶりにフットボールの公式戦に復帰を果たした彼は、今年、新たな挑戦の場になぜソロモン諸島を選んだのか? (文=宇都宮徹壱、写真提供=Phototek NZ、Solomon Warriors、Makoto Miyazaki)
「見えないけれど、わかります」という境地
久々に帰国した松本光平と再会したのは、新宿のアルタ前。われながらベタだなと思ったが、大阪出身の彼にわかりやすい場所となると、ここくらいしか思いつかない。あまりの猛暑に建物の中で涼んでいたら、トレードマークの金髪が視界に入る。 久々に再会した彼の様子を見て違和感を覚えた。視覚障がい者が持つ白杖を手にしていなかったのである。4年前の不幸な事故により、彼の右目は失明に近い状態(かろうじて光を感じることはできる)。左目もかすかに輪郭を認識できるくらいの視力だったはずだ。 「見え方については、まったく変わっていないです。(左目は)相変わらずボンヤリとしか見えないんですけど、ぼやけた見え方でも認識できるようなった、という感じです。慣れたというか、この4年間で経験値を積んだので『見えないけれど、わかります』という感覚になりました。以前に来た場所であれば、白杖がなくてもたどり着くことができます」 松本光平に初めて会ったのは、4年前の6月29日のこと。ニュージーランドから帰国して緊急手術を終え、リハビリを始めたばかり。右目に貼られた大きな絆創膏のような眼帯が、何とも痛々しく感じられた。最初はまっすぐ歩く訓練からスタートして、それからランニング、さらにはボールを使ったトレーニングにも取り組んでいる。 その年の9月には、ターンしながらのランニングや、ロビングボールの処理もできるようになっていた。そんな彼には以前、再手術の予定はないのか、尋ねたことがある。彼の答えは「手術をして、必ずしも視力が回復するわけではないんですよ」。その上で、こう続けた。 「今の見え方でも、生活やプレーで支障を感じなくなりました。リハビリを始めた当初と比べれば、空間認知能力も抜群によくなりましたし、浮き球の処理やヘディングもできるようになりました。走行距離もスピードも落ちていない。むしろ今のほうが絶好調という感じです(笑)」