人口減少と仕事、暮らし 福知山市長選挙を前に・上
■危機感募る福祉業界
人手不足に特に危機感を持つのが福祉業界。市内に事業所を置く12法人でつくる民間社会福祉施設連絡協議会の岩吹泰志会長(57)は、「コロナ禍以前から職員採用に応募が来ない状況が続いています。今後、高齢化が進む中で、10年後の社会を支え切れるかは分からない。真剣に考えないといけない問題」という。 福祉施設では、職員が賃金の良い別業界へ移ってしまうケースがある。施設側が賃上げを検討しても、国からの報酬が主な収入なため、大幅な改定が無い中では都市部企業のような賃上げが難しく、人材確保の壁になっている。 ICT(情報通信技術)やロボットの導入、働き方改革など、業界内で積極的な就労環境の改善に取り組む動きがあり、岩吹会長は「介護職にはきついイメージがあったと思いますが、そうした部分が大きく変わってきています。仕事のやりがいと併せてアピールしていくことに知恵を絞っていきたい」とした上で、「福祉が充実するまちに向け、行政もしっかり考えてほしい」と話す。
■自治会も役員不足
地域でも自治会の役員のなり手不足など、人口減少の影響を受ける。今年度、大江町の小谷自治会が、隣接する蓼原に合流し、市内の自治会総数は325自治会となった。 小谷では住民が5戸6人、ほとんどが90代という状況で、自治会長が業務を果たすことが難しくなっていた。そんな中、昨年の台風7号では集落への道路が土砂でふさがり、孤立した。 蓼原とはこれまでから、災害時の助け合いなどで交流があり、合流を要請。話し合いを重ねて合意を得た。市も書類作成の相談に乗るなどで手助けをしてきた。 蓼原の仁張衞自治会長(68)は「一人も取り残さない地域をつくることが、災害では特に大切です。これから人数は減っていくので、自治会間の共助が必要になってくると思います」と話す。 自治会の人材不足は今後、他の地域でも広がっていくとみられる。 各企業、地域は人口減少でも諦めることなく、今できることを選び、実践している。課題を共有し、これからをともに考えるリーダーが求められている。