銀行は2025年に訪れる大きな試練に備える必要がある
銀行は2025年に向けて、顧客体験(CX)の低下と収益性の悪化という重大な課題に備える必要がある。しかし、この二重の打撃を乗り越えるための解決策が存在する――それは「イノベーション」だ。 ■2024年はCX品質が低下 2023年は3つの銀行が破綻するという激動の年となったが、2024年は大きな利益こそ得られなかったものの、ある程度、安定した状況を取り戻した。しかし、大手金融機関は、投資銀行業務や資産運用の管理手数料によって縮小する純利ざやを補うことができたが、2022年や2023年の利益水準に戻ると期待する者はほとんどいない。 さらに、2024年は銀行のCX品質が低下した年となった。米国の銀行CX品質は3年連続で低下し、オーストラリアでは過去最低を記録、EUでも2023年から大幅に悪化した。CX品質の低下により顧客の忠誠心も低下するため、これは重要な問題である。 ■イノベーションの必要性 銀行の経営者たちは、競争力を維持し、顧客の忠誠心を確保したいのであれば、製品やサービスのイノベーションに力を注ぐ必要がある。特に「会話型バンキング」(AIを活用して顧客との対話を行い銀行サービスを提供すること)や預金商品に関する分野でのイノベーションが求められている。 しかし、旧式のインフラや煩雑な規制遵守の問題がイノベーションの妨げとなっていることも事実だ。それでも、決意と戦略的な思考、そして次世代のデジタルプラットフォームへの投資によって、銀行はこれらの障害を克服し、より革新的で顧客中心の銀行体験への道を切り開くことが可能なのである。
会話型バンキングがついに本格化する
■会話型バンキングがついに本格化する 2025年は、会話型バンキングの飛躍の年となるだろう。リーダー企業はAIの機能を駆使し、アプリ内のチャットボットをより賢く、顧客にとって有用なものへと進化させる。具体的には、アプリの操作を支援したり、サポートを提供したり、個別の金融アドバイスを行う機能が一般的になるだろう。銀行は、会話型アシスタントを効果的に設計し、AIガバナンスを実施する必要がある。また、実装時のリスクを軽減するために、会話型AIシステムの再構築に投資することが求められる。 ■「貯めてから支払う(SNPL)」という貯蓄サービスの登場 「貯めてから支払う」(Save Now, Pay Later:SNPL)として知られる新たなサービスが注目されている。SNPLとは、あらかじめ一定期間貯蓄を行い、その後に商品やサービスを購入する仕組みのことだ。顧客が貯蓄からリターンを得る手段としてインドのような国々で採用が進んでいるが、西欧市場での普及はこれまで限定的だった。 しかし、支払いサービスを提供するフィンテック企業クラーナ(Klarna)が新たにSNPLの提供を始めたことで、強固な加盟店エコシステムを持つ他社にも影響を与え、西欧市場でのSNPLオプションの導入を促進することが予想される。顧客の貯蓄をめぐる激競争が激化する中、銀行はイノベーションを起こし、経済的価値を提供する新たなソリューションを模索する必要がある。そうしなければ、「今買って、後で支払う(Buy Now, Pay Later:BNPL)」のトレンドで見られたように、競争から取り残されるリスクがあるだろう。 ■リアルタイム処理が標準となる 2025年までに、決済、資金調達、オープンバンキング、不正評価、国際送金などの金融取引において、リアルタイム処理が世界的に標準となるだろう。しかし、その普及がただちに革新的な製品やCXの向上につながるわけではない。 金融機関は、リアルタイム処理インフラを基盤として、付加価値のある製品やサービスを開発することを優先し、顧客の期待に応え、競争優位性を確保し、リアルタイム処理の未来を形作る必要がある。
Forrester