鈴木彩艶にとってパルマは“最高の環境”と断言できる理由。日本人の気質に一番似ているパルメンセ、GK専用の練習場など国内トップのトレーニングセンターも
オランダの名門を指標にクラブを強化
もちろん、サッカー選手として成長できる環境も整っている。 パルマは中田英寿らが所属した黄金期後に、二度の破産を経験。アマチュアリーグからの再出発を強いられるなど、困難な時代を過ごしてきた。 それでも2020年9月にアメリカ人の資産家、カイル・クラウス氏(61)が新オーナーに就任すると、状況は一変。1990年代後半から2000年代前半にかけて築き上げた栄光の時代再来へと、次々に投資を始めた。 先行投資の代表的な例が、パルマ市内から約15キロ離れたコレッキオという小さな街にある「トレーニングセンター」だ。場所などは中田が所属した時代と変わらないが、クラウス氏は私財を投じ、トレーニングセンターを次々に刷新。トゥルッポ氏によれば、今ではイタリアでも屈指の施設へと生まれ変わったという。 「最新の設備が整っている。イタリアの中でもトップクラスのトレーニングセンターだ。アメリカ人オーナーがかなりの投資をした。まだまだアップデートされていくと思う。ザイオンにとっては、成長するための最高の環境が整っているはずだ」。ピッチは7面(うち人工芝2面)あり、GK専用の練習場も完備されているという。 クラウス氏は周辺の土地もすでに買収し、今後は下部組織や女子サッカーチームの強化にもさらに注力する予定だという。モデルは「アヤックス」。優秀な若手を育て、自チームはもちろん、欧州中にパルマ出身の選手が活躍するなど、オランダの名門を指標にクラブを強化していくという。 つまり、新制パルマは明確な将来のプロジェクトを持った、発展途上のクラブというわけだ。二度のUEFAカップ優勝を誇る名門ながら、新たな時代へと歩みを進めるパルマ。セリエAで活躍し、将来はプレミアリーグでの活躍を目ざす彩艶にとっては、まさにこの上ない環境だと言えるだろう。あとはピッチでその実力を証明するだけだ。 取材・文●垣内一之(スポーツニッポン新聞社)