ダウン症の娘と父、ニューヨークへ タイムズスクエアに映された“成人式の写真”と家族の笑顔【広島発】
1枚の写真をきっかけに、その家族はニューヨークに降り立った。ダウン症への理解と支援を進めるチャリティーイベントに参加するためだ。ダウン症の娘と共に生きる父・船田興起さんはそのイベントで何を見たのか? 【画像】NYタイムズスクエアに映るダウン症の船田このかさん(20)
消えない不安と社会との「壁」
美しい街路樹が並ぶ広島市内。目の前の停留所にバスが止まり、1人の女の子が降りてきた。 船田このか、20歳。私の娘だ。 「お父さん」 私に気がつくと、たちまち笑顔になり手をふった。 このかが生まれ、ダウン症だとわかった時、何も知らなかった私は不安で押しつぶされそうだった。そんな思いとは裏腹にこのかは、ゆっくりゆっくり成長していく。いつしか不安は消え、共に生きる喜びへと変わった。ただ、一緒に過ごす日々の中で、社会との壁を感じることもある。それは、ダウン症の子どもを育てる保護者に共通する思いだ。 日本ダウン症協会広島支部が開催した講演会。参加した保護者から、こんな不安を耳にした。 「見た目で障がいがあるというのがわかるじゃないですか。これから大人になって一人で外出するようになった時にどんな障がいがあるのか、人の目をどう感じるか。そこが不安になります」 また、講演をした日本相談支援専門員協会・金丸博一副代表理事は「アメリカや欧米に比べて、日本は障がいがある人を『かわいそう』と思う人もまだまだいっぱいいると思いますよ」と話す。
1枚の写真が渡米のきっかけに
特別支援学校を卒業したこのかは、第三もみじ作業所「こねこね工房」で週に5日、パンを作る仕事をしている。 20年前には想像できなかった姿だ。 2024年、成人式にも出席。この時に撮った写真が全米ダウン症協会のイベントに採用された。 このイベントに参加するため、私たち家族はアメリカへ向かった。 ニューヨークの街をこのかと手をつないで歩くのは妹のそよ夏。ピンクのイベントTシャツをまとい、姉妹おそろいの服装。これはそよ夏のアイデアだった。コーディネートのコンセプトは「ザ・たっち(双子)」だと言って、家族を笑わせる。 イベント開始までもうすぐ。 ーーどんな気持ち? 「ワクワクした感じです」 このかは、その時をとても楽しみにしていた。