最低賃金1500円なら国民民主党の「103万円の壁」はどうなる?「手取り一律75万円増」などミスリードにも要注意
■ 給与収入75万円増が簡単ではない「3つのハードル」 所得税がかかる最低ラインを103万円から178万円に引き上げる施策の効果について、議員の中には差額である75万円の手取りが増えると主張しているケースも見られました。確かに178万円まで給与収入が増やせた場合についてはその通りなのですが、実現させるのはそう簡単ではありません。少なくとも大きなハードルが3つあります。 まず、社会保険の方の年収の壁があることです。月々8万8000円以上という適用要件を年収に換算したいわゆる106万円の壁と、扶養を外れる年収上限である130万円の壁とがあります。これらの壁を超えると働き損が発生するため、特に主婦・主夫層の中には社会保険の上限の手前で収入を抑えようとする人がたくさんいます。 岸田政権が2023年10月に導入した年収の壁・支援強化パッケージは、103万円の壁を対象にしていません。働き損が生じてしまう106万円と130万円の壁に対する支援措置を目的としているためです。 次に、そう都合よく178万円まで収入を増やせる仕事が見つかるものではないことが挙げられます。 今は年収103万円ギリギリで働いている人がシフト変更して収入を増やそうとする場合、勤務時間を1.73倍にする必要があります。それを「いいですよ」と認められる職場がどれだけあるでしょうか。同じような境遇の人が他に何人もいる職場であれば、なおさら調整が大変です。 「それならば転職しよう」と思っても、勤務地や仕事内容などさまざまな条件が合致して、勤務時間だけ1.73倍にできる都合の良い求人を見つけるのは簡単ではありません。また、勤務時間を変えずに時給を上げて給与収入を178万円に引き上げようと思っても、時給が1.73倍の仕事を見つけるのも大変です。いま、最低賃金の全国平均は1055円。その1.73倍となると時給1825円です。 そして3点目は、勤務時間を簡単には増やせないことです。パートやアルバイトなどで働いている人は家庭だったり学業だったりと、何かと両立させながら時間をやりくりして働いています。そんな時間制約の壁は、年収上限を意識している人たちにとって“ラスボス”とも言うべき大きくて分厚い壁です。勤務時間を1.73倍にできる人はかなり限られます。