妹を自殺に追い込んだ相手を「オレの嫁さんに」…被害者家族を懐柔した"怖いトモダチ"
エピソードには表と裏がある
「周りの人たちを自分のシンパにする、本人にそれと意識させずに手駒や兵隊にする、トラブルが起きた時に、必ず自分を被害者に見せられる……。そんな能力が羨ましい」 これは、漫画『怖いトモダチ』(岡部えつ 原作・やまもとりえ 漫画 / KADOKAWA)の試し読みができる記事の第6話公開後、SNSに寄せられた感想である。 羨ましいと言いながらも、心の奥ではその能力をおぞましく感じている読者の真っ当さが見て取れる。 【漫画を読む】トラブルが発生時、「自分を被害者に見せる」ことが上手な人のやり口 利用できるものは抱き込んでシンパにし、自分の前に立ちはだかろうとする者は、小さな芽のうちに叩き潰す。もしやられた相手が事実をばらそうとすれば、周囲の人々を巻き込んで、あっという間に悪人に仕立ててしまう。 恐ろしいほど人心掌握に長けたその人物こそ、『怖いトモダチ』の中井ルミンである。 漫画は、中井ルミンが「いい人」なのか、「悪魔」なのかを見極めるかのように、ストーリーが進んでいく。 人気エッセイストのルミンが主宰するオンラインサロンのメンバーたちは、ルミンを信頼し、中には熱烈なファンや崇拝する信者もいる。彼女たちの悩みに寄り添い、理性的かつ優しさにあふれたアドバイスをするルミンの姿は美しく、崇拝する気持ちになるのも分からなくない。 だがルミンの語るエピソードには裏がある。ルミンに貶められ、傷つけられた人たちは、事実は全く違うと話す。
「牛の糞臭い」と言った少女は…
そもそもの始まりは、ルミンの学生時代までさかのぼる。 ルミンと同じクラスの沙世は酪農家の娘だった。ある日クラスメイトたちが社会科見学で父の仕事を見にやってきた日、ひとりの女生徒が「牛の糞臭い」と口にした。 その後沙世は「クサヨ」「牛糞香水使うな」などといじめられるようになり、学校に来られなくなった。 人気エッセイストとなり、オンラインサロンの会員は4桁に、テレビにも登場するようになったルミンは、そんなかつてのいじめは自分の提案によって解決したブログに書く。 そんなある日、いじめの発端を作った元同級生がルミンのブログを偶然見つけて青ざめる。ブログの中身は「うそばっかり」、実は彼女が「牛の糞臭い」と口にしたのは、ルミンにそそのかされたからだったのだ。さらに事件は解決などしておらず、沙世は自殺未遂を起こしていた。 地元で子どもを育てる彼女は、近くのスーパーで沙世の兄にばったり会う。妹のいじめ事件をどう思っているのか、かつての日々について屈託なく話す沙世の兄。 後ろめたい思いもあり、沙世のことを聞きたくても遠慮がちになる彼女だったが、兄の方から、ルミンについて話しだす。しかもルミンが有名人になっていることをあげ、「地元の誇り」、「あんな子がオレの嫁さんになってくれたら」などと言いだす。 あまりの出来事に驚愕する彼女は、呆然としたまま兄の後ろ姿を見送る。 ルミンはどうやって自分がいじめた相手の家族を懐柔したのか。 恐ろしいまでに人心掌握に長けたルミンのやり方を知りたい方には、ぜひこれまでの記事とともに漫画の試し読みをご覧いただきたい。 ◇行動や発言には、常に何か思惑がありそうなルミンである。ここまでご覧いただいた方なら、沙世の兄は決してルミンの「タイプ」ではないことは、お分かりだろう。 ならば、チョコレートをあげた理由はなんだったのだろうか。 ちらりと出た「オレの同級生の富野と結婚しちゃったんですけどね」というセリフ。ルミンは結婚していたのか。そしてアメリカに行ったという沙世は、今何をしているのか。 いくつもの謎が残して、第8話「婚約を破談にさせ略奪婚のあと離婚…御曹司が「純粋だから」と信じる”怖い女”の策略」へと続く。 ---------- 人気エッセイスト 中川ルミン主宰のオンラインサロンには、彼女を慕う大勢のファンが集う。子どもの学校の悩み、受験、親戚との確執、親身に悩みに寄り添うルミンは「いい人」そのもの。だがルミンの素顔には謎がある。 高校時代のルミンの記憶は真実なのか。ルミンをめぐるさまざまな人の思惑と言い分が交錯するミステリーコミックエッセイ『怖いトモダチ』(岡部えつ 原作・やまもとりえ 漫画 / KADOKAWA)。 ----------
岡部 えつ/山本 えり/FRaU マンガ部