合言葉は「ゴールドハンター」。デュポン加入で勢いづくフランス7人制代表が地元オリンピックに挑む。
パリオリンピックが開幕する。男子7人制ラグビーは、大会開会式を待たず、7月24日に戦いの火蓋が切られる。 現地時間7月21日夜、男子7人制フランス代表がオリンピック村に入村した。 「オリンピックに参加できて、この選手村に入って、あらゆる国の、あらゆる競技の選手と交流できるチャンスをもらえて、とても光栄」とアントワンヌ・デュポンは喜びを噛み締めた。 「僕たちが到着した時、ジャクソン・リチャードソン(フランスのハンドボールのレジェンド、1992年バルセロナオリンピック銅メダリスト)のウェルカム・スピーチがあった。それで一気に大会モードに入った」と続けた。 オリンピックへのチャレンジを希望していることを最初に15人制代表チームにほのめかしたのは、2022年のシックスネーションズの期間中だったと言う。 「オリンピック、しかもパリで開催される大会。ちょうど自分のキャリアの中で、コンフォートゾーンから出て、新しいチャレンジが必要なタイミングだった。今年のシックスネーションズには出場できなかったけど、この壮大な目標を達成するためには、犠牲を払わなければならない。このチームと一緒に行動して、15人制とは異なるこの競技に慣れ親しみたかった。協会とクラブが協力して、僕が7人制でも15人制でもパフォーマンスできるように、賢くマネージメントしてくれて、今の所、良い結果が出ている。あと数日続いてほしいな」と、今季すでに15人制ではヨーロッパチャンピオン、フランスチャンピオンになり、7人制ではロサンゼルス大会と、マドリードのグランドファイナルで優勝した男は微笑む。 このチームの強みは、個性豊かなタレントが揃っていて、誰もがチームを第一に思っているところだと言う。 「団体競技では当然のことだけど、7人制ラグビーはさらにそれが求められる。自分の前にいるチームメイトのミスをカバーしないと、大きなダメージにつながることになる。お互いに助け合い、補い合う、このチームにはそんな空気が漂っていて、グラウンドの中でも外でもとてもいい雰囲気」 男子フランス代表は、予選プールでアメリカ、ウルグアイ、そしてオリンピック2連覇中のフィジーと戦う。 「7人制ではどの国も侮れない。とても順調に進んでいても、少しでも気を抜けばすぐに形勢が逆転する。誰が相手でも試合が終わるまで決して気持ちを緩めてはいけない。国によって予算も違うし、この競技を発展させようという意欲にも差があり、ラグビーの技術的には差はあっても、アスリートとして優れた資質があれば、とんでもなく素晴らしいパフォーマンスを発揮することもできる」 6月2日にマドリードのグランドファイナルで優勝し、チームは6月14日からフランス南西部、大西洋に面したカップ・ブルトンで合宿を行なってきた。7月8日にオリンピック参加メンバーの公式発表が行われ、この日からトップ14を終えたデュポンも合宿に加わり、翌日はすでに渡仏していたNZとゲーム形式の合同練習を行なった。 「とても激しく強度の高い、本当の試合みたいだった。この合宿で準備してきたプレーを確認することができた。またNZはブレイクダウンでのプレーの精度が高く、これも良い練習になった」とキャプテンのポーラン・リヴァはこの対戦を評価する。 7月11日は、ポーのホームスタジアムで練習を一般公開し、1万人のファンが詰めかけた。今年のチームの好成績もあるが、やはりデュポン効果だろう。彼が7人制をすることで、これまで15人制しか見ていなかった人も、7人制を追いかけるようになった。 「アントワンヌは、この競技にとって素晴らしいアンバサダーだ。このチームに加わることにで、強いメッセージを発信してくれた。彼は我々と共に、世界最大のスポーツの大会で究極の栄光を掴み取りに行こうとしている。そもそも、オリンピックは人と人がつながること、そして人々に喜びを与えることが目的だったはず。アントワンヌは我々と共にそれをしたいのです」とジェローム・ダレット ヘッドコーチも顔をほころばせる。 今年は男子7人制ラグビーの第2日目と第3日目の間に開会式が行われる。 「リオでも6~7時間、現地で待たなければいけなくて、とても疲れた。行き帰りの時間もある。翌日は、うまくいけば準決勝と決勝だ。エネルギーを無駄にできない。グループ内でも話し合うまでもなかった。次の日に、金メダルを首からぶら下げることができれば、後悔はない」とチームの唯一の五輪経験者のステファン・パレーズが言う。 チームの合言葉は「ゴールドハンター」だ。