〈どうなる?私たちの歯〉」「昔は儲けられたのが今は…」日本歯科技工士会会長が独白150分「歯科技工士不足は深刻化する一方」でも「人口に対して適正数が何人なのかはわからない」
業界の構造的な問題から生活が立ちゆかないなどの苦境に立たされ、現場から悲痛な声が上がっている歯科技工士。しかし、公益社団法人日本歯科技工士会の地道な運動もあり今年6月より、歯科の初診料と再診療に技工士の「取り分」が明確に加算されることになったという。前編に続き、同会の森野隆会長のインタビューとともに解説する。 〈画像多数〉このままでは入手困難に?技工士の技が凝縮された入れ歯の制作作業
日本歯科医師会にお願いしたいこと
――2024年6月1日施行の社会保険歯科診療報酬改定で、40歳未満の勤務医(歯科含む)や勤務薬剤師、事務職員に加え、歯科技工所等で勤務する従事者への賃上げ措置として保険点数が引き上げられました。 ええ。ベースアップとしては2024年度に2.5%、2025年度にはさらに2%を目標としています。 ――しかし、歯科医師側がきちんと払うでしょうか。 そうですね。そこは検証しないといけません。厚労省も2年後の調査時に反映されているかどうかを調査すると明言しています。 その際に歯科技工士従業員の給与が上がっていないようであれば、次の診療報酬改定では、引き上げられた保険点数は削るでしょうね。「せっかく上げたのに、歯科医師が懐に入れたら引き上げた意味ないよね」となりますね。 ですから、われわれが歯科医院の先生方にお願いしたのは「歯科技工所がベースアップ、料金を上げたいと交渉に来ると思います。そのときには、今回の点数加算が行なわれたことを踏まえて真摯に対応してください」ということです。 日本歯科医師会に地方の会員までしっかり伝えてください、という要望書を先日出しました。 ただ、現状ではこれがわれわれにできる精一杯なんです。「要望書を出しましたから、きちんと歯科技工料を上げる交渉をして下さい」までが、最終的には、歯科医院と技工所の交渉になるので。 ――歯科医に要望書を出すような流れになったのは、賃金が安いという現場の声が多かったからですか。 それよりも、技工士のなり手の数が少なくなったことが大きいですね。ただこれは歯科医も同じことで、歯科医師は年間約3000人しか誕生しないから高齢化も進んでいるし、後継者不足も深刻と聞いています。中には開業しても、億単位の借金を背負ってしまう歯科医もいる。 そういう意味では、歯科技工士はまだいいと思うんですけどね。我々は地域に縛られず営業ができます。人によって違うと思いますが、1人の技工士が食べていくためには、仕事量によっても違いますが、取引先が10軒もあれば十分だと思いますから。
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