<日本一を目指して>仙台育英 チーム紹介/1 秋季大会を振り返る 磨いた「終盤力」光る /宮城
◇全国の強豪との距離感確認 「日本一までの距離感はつかめた」。2019年8月18日、夏の甲子園準々決勝で星稜(石川)に1―17で完敗した直後、仙台育英の監督、須江航(36)はつぶやいた。 【動画】センバツ出場校、秋季大会熱闘の軌跡 須江は「甲子園優勝は偶然できるものではない」との考えから、頂から必然的に招かれるようなチームを目指す「日本一からの招待」をスローガンに掲げ、昨夏も宮城大会から本大会まで順当に勝ち上がってきた。だが、準々決勝で全国レベルの強豪校に大敗。それでも須江は次の大会を見据え、言った。「近い将来、必ず面白い野球で日本一を取る」 ◇ ◇ 3年生が引退し、1、2年生の新チームが始動した。甲子園のマウンドに立った笹倉世凪(せな)(1年)や伊藤樹(同)、打線の主軸を担った入江大樹(2年)ら夏の甲子園を経験した選手が数多くいる。主将の田中祥都(2年)は部員たちに「3年生の良いところを受け継ごう」と呼びかけた。 その一つが「終盤力」。田中は昨夏までのチームについて「終盤の七~九回の展開をしっかり考えて、リードを広げることや逆転に成功していた」と分析する。実戦形式の練習では終盤にピンチを迎える展開を想定し、勝負強さを磨いた。 こうして迎えた19年秋季大会。県大会では準々決勝でライバルの東北と対戦したが、乱打戦の末9―7でサヨナラ勝ち。その後は順当に勝ち上がり、8年連続23回目の優勝を決め、東北地区大会に駒を進めた。 東北大会初戦は明桜(秋田)と対戦。五回までにリードを4点に広げたが、七回に逆転されてしまう。その後も2度勝ち越すが、いずれも追いつかれた。出場した選手が口をそろえて「明桜戦が一番きつかった」と振り返るが、延長十一回表に勝ち越し点を奪うと、その裏を無失点でしのぎ、9―8で勝利。終盤の強さが光った。 この後も盛岡大付(岩手)との準決勝、鶴岡東(山形)との決勝はいずれも一時ビハインドを背負う展開だったが、どちらも逆転に成功。3年ぶり10回目の東北大会優勝を果たした。 一方、各地区大会の優勝校が集う明治神宮大会は初戦で近畿覇者の天理(奈良)に6―8で敗れ、選手たちは再び全国レベルの強豪校との差を痛感。練習グラウンドのベンチに履正社(大阪)や星稜などの戦力分析を書いた紙を掲示し、常に全国レベルとの距離感を確認した。 秋季大会の成績が評価され、3年ぶり13回目のセンバツ出場を決めた仙台育英。須江は「今の高校野球で(優勝候補として)突出しているチームはないが、上位10チームに私たちはいる」と、優勝のチャンスは十分にあるとし、「試合の質を高めて勝利したい」と意気込みを語る。 ◇ ◇ 第92回選抜高校野球大会(毎日新聞社、日本高校野球連盟主催)が3月19日に開幕する。東北勢悲願の「日本一」を目指す仙台育英。チームづくりの神髄を探る。【滝沢一誠】=敬称略、つづく