英国王室が愛用する、麗しき「エメラルドジュエリー」の歴史と魅力
ロイヤルファミリーが所有するエメラルドジュエリーのコレクションは、かなりの数にのぼる――クイーン・マザーのお気に入りのブローチや、ダイアナ妃がチャールズ皇太子から誕生日に贈られたイヤリング、そしてユージェニー王女が結婚式で着用したティアラまで、目を見張るものばかり。 【写真】真のファッショニスタ! エリザベス女王の華麗なるロイヤルファッションヒストリー ダイヤモンドこそ、王室が所有するジュエリーコレクションのなかでおそらくトップに君臨するが、エメラルドも並外れた魅力を備えている。繊細ながら強力なカリスマ性があり、ローマ神話に登場する愛と美と豊穣の女神・ヴィーナスと関連づけて語られることも多い。ウォリス・シンプソンやジャクリーン・ケネディがエメラルドの婚約指輪を着用していたことや、キャサリン皇太子妃が妊娠中にエメラルドのジュエリーを選んだことも、うなずけるだろう。 ここでは、そんなエメラルドが英王室と紡いできた歴史と、実際に着用している姿を、改めて振り返ってみよう。 From TOWN&COUNTRY
はじまりは「ケンブリッジ・エメラルド」
英王室が所有するエメラルドのなかで、最も有名なのは「ケンブリッジ・エメラルド」かもしれない。 19世紀初頭、初代ケンブリッジ侯爵アドルファスの妃であるアウグステ・フォン・ヘッセン=カッセル(写真)が、フランクフルトのチャリティイベントで行われたくじ引きに当選。そのときの賞品こそが、カボションカットやペアシェイプカットが施された、数十個のエメラルドだった。 ジュエリーに加工されたものもあるが、大半はオーガスタ妃の娘であるメアリー・アデレード・オブ・ケンブリッジに受け継がれている。
エメラルドと英王室の歴史
メアリー・アデレードはそのエメラルドを息子のフランシス王子に託すが、彼が1910年に死去する際に遺した相手は、彼の愛人だった。それを危惧した王子の姉で、のちのジョージ5世の妻、メアリー王妃(メアリー・オブ・テック、写真)は、すぐにエメラルドを取り戻し、愛人にはブローチをひとつだけ慰めの品として残したという。 1911年に行われたデリー・ダーバー(ジョージ5世のインド皇帝継承を記念して行われた大規模な政治儀礼イベント)のため、メアリー王妃はこれらのエメラルドを、ティアラ、ネックレス、イヤリング、ブレスレット、ブローチ、ドレスの胸元に着装するストマッカーを含む一式のパリュールにした。 さらにその数年後、王妃はウラジミール・ティアラとセットのネックレスにも、このエメラルドを装着したという。 ここからは、英王室メンバーが愛用する、吸い込まれそうなほど美しく輝くエメラルドジュエリーの数々を見ていこう。