笑って泣いて『 侍タイムスリッパー 』、世界進出目前か!? 池袋シネマ・ロサの1館上映から拡大中!(ネタバレあり)
まさかこんなに痺れるとは。今やとにかく話題の映画『侍タイムスリッパー』。8月に池袋のシネマ・ロサの1館からスタートし、爆発的なスピードで口コミが広がり、現在130館超えで上映中だそうです。 【写真】池袋シネマ・ロサでの舞台挨拶の様子
■ファン爆増中!『侍タイムスリッパー』あらすじ(以降ネタバレあり) 自主映画のため、京都の撮影所やスタッフの協力などを得て公開へ辿り着いたそうですが、しかし、監督のインタビューを読んだら「撮影後、通帳を見たら残高7,000円だった」と書かれていました。今や130館上映、興行も順調で良かった……(涙)。そんな状況ですから、多くの方が口コミしているので、すでにあらすじをご存じの方も多いかもしれません。簡単にまとめておくと、ときは幕末、京都の夜。会津藩士・高坂新左衛門は、密命で長州藩士と一戦を交えているところで落雷をうけ、140年後の現代の時代劇撮影所にタイムスリップ。現代では常日頃、髷を結い、月代のため髪を剃り、武士言葉を使うので「本物の武士のよう」と重宝されつつ、一方で役者バカとも言われる始末。そして「斬られ役」として奮闘していくという物語。 時代劇や殺陣が楽しめるのは間違いありませんが、コメディ映画と言われながら、コメディ以外の要素も多くヒューマン映画なのかもしれません。笑って泣いて興奮して、スペクタクルエンターテイメントなのです。 ■『侍タイ』見どころ①食べるシーンで泣く 中でも、震えたのが、お世話になっている西経寺で主人公の侍、高坂新左衛門が初めてショートケーキを食べるシーン。家主夫婦がどう食べるのか観察しつつ、口に運び、おいしすぎて特別なものと感じた新左衛門。「これは大変高価なものではないか」と聞くと、住職妻が「これ普通にその辺でこうてきたやつ」と軽く答える。その後に「こんなにおいしいものが気軽に食べられるほど、日の本はよい国になったのじゃなぁ」と味わう。明治維新で負けた会津藩だけれども、我が国日本が発展を遂げよくなったことを受け入れ実感しているシーンです。高坂新左衛門役の山口馬木也さんの演技がその事実をリアルに受け止め、感じいっている様がたまりません。泣けます。 他にも食べるシーンではエピソードが多く忘れられないものに。腹ペコを隠していた後におにぎりを頬張るところでも、故郷「磐梯山の雪のような白さのおにぎり」と例えていて、その感動ぶりが空腹を満たすものだけでないことが伝わってきます。私も、こんな恩義を受けたら「富士山の雪に例えよう」と心にメモしました。 ■『侍タイ』見どころ②現代に舞い降りた侍の絵が美しい 侍が現代の時代劇撮影所に舞い降りるシーンはもちろん、街中に佇むシーンでも、ワンシーンごとに絵が美しく、見応えがあります。途中、新左衛門が現代の髪にするシーンがあって、普通の一般的なショートヘアになるのですが、そちらの方に違和感を持ってしまうほど。それだけ侍がリアルだったのです。 後半の風見と新左衛門との真剣勝負の絵も美しく見どころです。演技ではなく試合として挑んでいるはずが……。侍の魂で戦っているけれど、侍ではなく役者としての殺陣作法を守っている。それは風見も同じ。その主役の二人が向かい合って動かない約40秒の間は、黒澤明監督の『椿三十郎』のオマージュだとか。美しくヒリヒリするシーンです。 ■『侍タイ』見どころ③細部にさりげなくメッセージが込められている 先に書いた殺陣の刀の位置もそうですが、仕込みや伏線を確認したくて、リピート鑑賞をしている人も多いのかもしれません。あー、原稿を書いていると次々にシーンを思い出します。論語を誦じて、殺陣の師匠と心を通わせるシーンもいいんですよ。 また、さらりと劇中で出てくる『一生懸命頑張っていれば誰かがどこかで見ていてくれる』という台詞。5万人に斬られた伝説の斬られ役、この映画のキーパソンでもある福本清三さんの言葉。映画の核となるメッセージ。全ての役者さんをはじめスタッフの方々、この魂が込められているように思えるのでした。 カナダの「第28回ファンタジア国際映画祭」では観客賞金賞を受賞したり、すでに海外へも人気は発展しそうな勢いです。ぜひ、劇場へ。舞台挨拶を見たくて私もリピしました。個人的には願わくば、韓国ドラマ『ムービング』の脚本カン・フルさんに見てほしい!この面白さ、きっと喜んでくれるに違いないと思うのです。池袋から、日本全国へ、そして世界へ。いざ、出陣!! 【エディターTARUI】