ひとり身高齢者の逝去…相続人が苦しむ「3つの深刻な問題」とは?【司法書士が解説】
独身で子どもがない方が亡くなると、その方の相続人は多くの場合、きょうだいや甥姪になります。いま寿命を迎える年代の方は、きょうだいが多いケースが多いため、必然的に相続人の数も増え、相続手続きは煩瑣を極め、プロが取り組んでも一筋縄ではいきません。多数の相続問題の解決の実績を持つ司法書士の近藤崇氏が、多く寄せられるトラブルの実例をもとに、わかりやすく解説します。 年金に頼らず「夫婦で65~80歳まで生きる」ための貯蓄額一覧
「子どものいない方の相続」…留意すべき課題・問題点とは?
これまで筆者の元には「子どものいない方の相続」について、数多くの相談が寄せられてきました。具体的にどんな点が課題や障害になるのか、実際の相談内容から見ていきます。
(1)ほかの相続人を把握していないケース
きょうだいの子、つまり甥姪になると、それぞれの相続人は「いとこ」同士となります。若いときならともかく、40代50代となると、遠い親族関係にあるいとことはほとんど面識もなく、所在地や連絡先が判らないケースもあります。 昨今では、役所における戸籍など取得についてもかなり厳格に行われています。その使用目的以外にも、具体的に相続関係を疎明する必要があります。 きょうだい・甥姪といった傍系血族の場合、戸籍を取るのがかなり大変です。 なぜならば、これらの作業には、 (1)亡くなった人に子どもがいないことを証明 → 亡くなった方の出生~死亡まですべての戸籍が必要 (2)その亡くなった方ときょうだいであることを証明 → 亡くなった方の「両親」の戸籍が必要 *兄弟関係の疎明をするため (3)亡くなった方のきょうだいが、すでに死亡している場合 → 亡くなった方の「きょうだいの」死亡を示す戸籍が必要 という段階を踏まなければならないのです。戸籍取得のたびに、これらをすべて書面で疎明する必要があるのです。具体的には、相続関係を示し、遺産を引き継ぐ権利があることを、戸籍で証明しなければなりません。 戸籍は、昭和の前半に出生した方の場合、少なくとも2回は変わっています。 昭和:昭和32年法務省令第27号による改製(昭和33年度から昭和39年度にかけて実施) 平成:平成6年の法務省令による改製(実際に作業が行われたのは平成20年前後の市区町村が多い) ちなみに、筆者の事務所がある横浜市は、下記のように案内されています。 『除籍謄本(除籍全部事項証明書)・除籍抄本(除籍個人事項証明書)・改製原戸籍謄抄本について』 https://www.city.yokohama.lg.jp/kurashi/koseki-zei-hoken/todokede/koseki-juminhyo/shoumei/jyoseki.html 女性の場合、結婚などで必ず本籍及び筆頭者が変わっていますし、離婚や養子縁組などでも戸籍に変更があります。 それに加えて、きょうだいや甥姪の生存や現住所まで辿っていくとなると、相続などで戸籍取得に慣れている専門職でも、かなり大変な作業です。