小6長男に叫びながら続けた心臓マッサージ「戻ってきて」…事故で亡くした母の“命の講演会”
■突然訪れた運命の日 しかしその日は突然訪れました。2003年2月13日の朝方、突然人工呼吸器をつけていたのどの気管支から大出血が起こり、容態が急変し、心臓が止まってしまったのです。お医者さんはすぐに駆け付けてくれましたが、もう何も手を出すことができず、ただそこに立っているだけでした。 私と主人はとても諦めることができるはずがありません。ただひたすらに奇跡を信じて「戻ってきて」と叫びながら自分たちの手で心臓マッサージを続けました。何時間も続けました。でも無情にも貴弘の心臓はもう二度と動くことはありませんでした。奇跡は起こりませんでした。私たちの願いも虚しく、結局一度も目を覚ますことなく、また、笑顔を見せることもなく、私たちの手元から遠い天国へと旅立ってしまいました。まだこの世に生を受けて12年しかたっていない子供を、たった一人で逝かせてしまったのです。ほんの4日前に12歳の誕生日を迎えたばかりでした。 みんなに「さよなら」さえも言えなかった貴弘は、どれだけ心残りだったことでしょうか。あまりにも短すぎる人生でした。もうすぐ中学生になることを本当に楽しみにしていました。たくさんの夢を持っていました。「中学校に行ったら何の部活に入ろうかな」と楽しそうに話していたことを思い出します。でもその夢は何一つかなうことはありませんでした。そればかりではありません。親である私たちの希望も、息子たちの大切な兄弟の絆も、おじいちゃんおばあちゃんの生きがいも、そして私たち家族全員の幸せもすべては無残に断ち切られてしまったのです。 ■辛く悲しい日々 貴弘の死は決して一人だけの人生ではなく、周りの多くの人の人生をも変えてしまいました。私は母親として自分の命に代えてでも守ってあげたいと思っていたのにそれを果たすことができず、無力な自分自身をずっと責め続けました。どうして何の罪もない子供の命が奪われるのかとあまりの理不尽さに、もうこの世には神も仏も無いんだと思わずにはいられませんでした。