二宮和也の『【推しの子】』カミキヒカル役は間違いない 宮野真守とも通じる“悪魔的”演技
Prime Videoで配信中のドラマシリーズ『【推しの子】』。12月20日からはドラマシリーズの続きを描いた映画『【推しの子】-The Final Act-』が公開される。第7話・第8話において、アイ(齋藤飛鳥)の死の真相を追究するアクア(櫻井海音)は、カミキヒカルという男の存在に辿り着く。手掛かりは、アイが以前通っていた劇団のワークショップでの接点のみ。アクアとルビー(齊藤なぎさ)の父親である可能性、そしてアイの死との関連性など、多くの謎を秘めたこの人物は、物語の核心を握る重要な存在として浮上してくる。 【写真】映画『【推しの子】-The Final Act-』新ビジュアル その存在は、物語全体に暗い影を落とし続け、「カミキヒカルは何者なのか」という疑問は、作品の中心的な謎の一つとなっているほどだ。 アクアとルビーにとって最大の宿敵となりうるカミキヒカルを、日本アカデミー賞最優秀主演男優賞をはじめ、数々の名誉ある賞を受賞してきた実力派俳優・二宮和也が演じていることが発表された。 原作をすでに読んでいるファンならば知っての通り、カミキヒカルは掴みどころのない演技が必要なキャラクターだ。その理由は、表層的な狂気の演技だけでなく、その奥に潜む計算高さや知性、そして時に垣間見える人間らしい感情の機微まで、多層的な演技が求められるからである。アニメ版ではまだ登場回数は少ないものの、第二期の終盤から宮野真守がこの複雑な特性を巧みに表現し、カミキヒカルの持つ二面性を声色や演技の細かな変化で見事に表現している。 『【推しの子】』は漫画からアニメ、そして実写ドラマへと、それぞれの媒体の特性を活かした形で展開を重ねてきた。アニメ版がクスッと笑える描写も含めて原作の世界観を忠実に映像化していることもあり、実写ドラマ版はより本格的なサスペンスドラマに近い印象を与える。これは作品の解釈の違いというよりも、メディアの特性による自然な変化だろう。原作やアニメで見られる誇張された表情やデフォルメされた演出、コミカルな要素などが、実写では異なる形で表現されることは珍しくない。 こうした背景も踏まえると、登場キャラクターの中でもアニメ版から既に静謐さを纏っていたカミキヒカルは、実写表現との親和性が高いのではないだろうか。実写版『【推しの子】』が醸し出すサスペンスドラマ的な空気感の中で、カミキヒカルは物語の闇を体現するラスボス的な存在として浮かび上がってくる。その役を演じる二宮和也は、まさに物語のダークサイドを担う主役として抜擢されたと言っても過言ではない。 二宮の演技力が過去の作品で十分に証明されていることはいうまでもないが、特にカミキヒカルを演じるにあたって期待したいのはその“悪魔的”な演技だ。『ブラックペアン シーズン2』(TBS系)では、渡海征司郎と天城雪彦という二つの人物を、声のトーンから姿勢、歩き方まで緻密に演じ分けた二宮。一人二役で、まったく異なる人格を表現した二宮の演技は、カミキヒカルという裏表の狂気を秘めた存在を描く上でも、新たな期待を抱かせる。 原作ファンとしては、実写版『【推しの子】』で二宮演じるカミキヒカルが、どのような静かな狂気を見せてくれるのか、今から楽しみでならない。原作とアニメで描かれた彼の存在感は既に圧倒的だったが、これまで二次元のなかで表現されてきた彼の二面性が、現実世界の中でどのように表現されるのか。「生身の人間」として描かれるカミキヒカルの姿は、きっと私たちに新たな衝撃を与えてくれるはずだ。
すなくじら