パリ五輪で銀メダルのセーリング、有力選手輩出の学生ヨットが曲がり角 岡田、吉岡両選手が20年ぶり獲得の470級
学生ヨットで最大のイベント、全日本学生選手権(以下、全日本インカレ)は各校、470級、スナイプ級それぞれ3艇ずつの総合成績で争う団体戦だ。470級、スナイプ級と両クラスの成績を合わせた総合の3部門で優勝を決める。 ▽新しい艇が有利 ヨットレースは、選手の運動能力で勝敗や順位が決する他の多くのスポーツとは違い、ヨットを操縦して、順位を争う。 選手に問われるのは一義的に操船の技術と風や波、潮流などの変化を適切に捉えて帆走する能力だが、セールやマスト、艇体が持つ性能とそれらをチューニングして引き出すことも成績に関わってくる。 470級、スナイプ級を問わず、購入したばかりの新しい艇が艇体の強度などで、年数を重ねた艇よりもスピードが出ると見られていて、全日本インカレなどレースには、購入から年数を重ねていない艇から投入することが一般的だ。 多くの大学では両クラスとも、3艇以上を保有し、古い艇は練習で使用することが多い。このため、多くのヨット部では「レース艇」「練習艇」と分けて呼んでいる。 スナイプ級には「スナイプ級学連申し合わせ事項」で、レースに出場する「3艇の船齢の合計を7年以上とする」との規制が設けられている。
「船齢」とは艇の購入から1年間を1年と数えている。一例として購入したばかりの新艇を2艇レースに出す場合、残りの1艇は購入から5年以上経過した艇を出さなければならなくなる。 ところが、470級にこのような規則は設けられていない。このため、財力のあるヨット部が購入したばかりの新艇を3艇そろえてレースに出場した場合、レースが始まる以前に資金力の差で既に優位に立つ可能性もある。 ある関東の大学のOBは「スナイプ級と同じような規制が470級にも設けられるべきで、ないのがおかしいのではないか」と首をかしげる。 ▽有名私立大が上位に 2019年から23年まで5回の全日本インカレで、470級とスナイプ級の結果を合わせた総合成績で5大会全て上位5位に入ったのが早大、同志社大、慶応大の3校だ。2019年は慶大が優勝し、20年以降は早大が4連覇している。 これらの強豪ヨット部はいずれも歴史と伝統がある有名私立大で、寄付を見込めるOB・OG会組織がしっかりしている。大学が支援する場合もあり、財力があるため新艇の導入でも有利に働く。