パリ五輪で銀メダルのセーリング、有力選手輩出の学生ヨットが曲がり角 岡田、吉岡両選手が20年ぶり獲得の470級
パリ・オリンピックのセーリングの混合470級で岡田奎樹、吉岡美帆両選手のコンビが銀メダルを獲得し、日本は20年ぶりのメダルに輝いた。今回も含めて日本がこれまでに獲得した3個のメダルは全て470級で、岡田選手は早稲田大、吉岡選手は立命館大のそれぞれヨット部出身で学生ヨットが快挙を支えてきた側面がある。ところが近年は、部活動の逆風となる要因により、世界で活躍する有力選手を輩出してきた学生ヨットが曲がり角に差しかかっている。(共同通信=山崎恵司) 【写真】「実は競技中に…」やり投げ金メダル・北口榛花選手が偉業達成の裏で感じていた異変 反響は予想以上「あんなに食べているところばっかり写っているとは…」
▽値上げに衝撃 国内で最も普及している艇種の一つである470級は、大学生のレース艇に1973年から採用されている。名称は、船の全長が470センチであることに由来する。統括団体の日本470協会が2022年時点で把握していた国内の活動艇数は約440あり、うち大学生の部活動が約7割を占めていた。 学生ヨットの統括団体、全日本学生ヨット連盟(以下、全日本学連)の2024年版加盟校リストによると、全国9水域(北海道、東北、関東、中部、近畿北陸、関西、中国、四国、九州)に計110校が加盟している。 そんな大学のヨット部に衝撃が走ったのが、470級の価格の値上げだ。日本で470級を製造している2社が2022年11月、「為替変動、調達品の値上がり(輸送費を含む)、加工費アップなど」を理由として値上げを全日本学連側に打診した。 学生のレースに使う470級とスナイプ級は、全日本学連とボートメーカーなどが話し合って価格を定めている。全日本学連は各水域の代表者による検討委員会で対応を協議し、メーカー2社とも調整。
その結果、「材料費の負担、輸入物品の価格上昇もあり、艇の製造を維持するためにも一定度の値上げに応じざるを得ない」との見解をまとめ、2023年1月6日付で「価格改定のお知らせ」を発表した。 帆走に必要な部品などについても標準仕様を定め、1艇当たりの学生仕様標準価格は55万8000円引き上げて181万8000円となった。ある関西の大学ヨット部関係者は、新しい470艇を購入した場合にはマストやセールなど帆走に必要な備品も足すと「300万円は超える」と話した。 ▽登録大学数が減少 470級を登録している大学は2021年に88校だったが、24年は82校に減った。6校の減少には、今回の値上げの影響も考えられる。 一方、価格が1艇当たり125万円と割安なスナイプ級の登録校数は2024年に79校と、21年より1校増えた。 全日本学連の規約は、加盟校はいずれかの艇種を3艇以上所有することを求めている。全日本学連の2024年版加盟校リストによると、470級とスナイプ級の両クラスとも活動している大学は60校にとどまる。