【特集】「オール一本勝ちで優勝できるように」パリ五輪での連覇誓い、日々奮闘 最強兄妹に鳥谷敬が直撃 阿部一二三・詩
■「兄が支えてくれた」 初めての一回戦負け 兄妹の絆が糧に
東京オリンピック以降、無敗を重ねる阿部兄妹。今や【日本柔道の顔】となった二人は、来るパリ五輪でも連覇が期待されています。そんな2人には、柔道人生の転機となった一戦があったといいます。 8年前、当時高校生だった詩選手は、相手の軸足を刈ったとみなされ、1回戦で反則負け。優勝候補として臨んだ高校1年生のインターハイでの出来事でした。 (詩)「1回戦負けっていうのは初めてで…。結構、自分の中では衝撃でした」 その試合の3週間後、落ち込む詩選手の前に現れたのが、東京の大学に進学していた兄・一二三選手。詩選手の練習に付き合い、無言の喝を入れました。あらためて、当時の映像を3人で観てみると…。 (一二三)「この映像はヤバい(笑)!」 (鳥谷)「これ、兄妹じゃなかったら大変なことになってる(笑)!」 (一二三)「兄妹でもマズいかもしれないですね」 (詩)「(映像を見て)すごく懐かしいなって思うのと同時に、めっちゃ痛かったのを覚えています。【なんでこんなに投げるんやろう】って…。【そんなことせんといて】と思いながらやってたのを覚えています」 (一二三)「僕から見ても、これはちょっとやりすぎですね(笑)。今思うと、僕もちょっと若かったんかなって。多分、大学1年生の時とかだったと思うんで」 (詩)「でも、(この出来事があって)1番、自分の柔道に向かう姿勢が変わったかなと思います。【どうしたらいいんだろう】と思っている時に、兄が本当に支えてくれたので感謝しています」
■「あの試合があったから今の自分がある」東京五輪かけた死闘の24分
妹・詩選手を支えた兄・一二三選手にも人生を左右する死闘がありました。4年前の東京五輪代表選考時、代表の座を争ったライバル・丸山城志郎(じょうしろう)選手との一戦で、選考レースは熾烈を極めました。 どちらがオリンピックに出ても金メダル最有力と言われる中での、ワンマッチ対決。一瞬の隙が命取りとなる中、一二三選手はひたすらに攻め続けました。 試合が動いたのは、試合が延長に入り20分が経過し、互いの体力が尽きかけたその時でした。大内刈りを仕掛けたのは、一二三選手。激闘の末、東京オリンピックへの切符を掴み取りました。 (一二三)「試合で勝って泣いたことって多分なかったと思うんで、初めての経験だったと思います。あんなに泣いてしまったのは。嬉しいとかよりも、ホッとしたっていう気持ちが大きかったのかなって思います」 (詩)「私も生きた心地がしなかったですね、あの24分間は」 (一二三)「精神削られたというか…。でも、あの試合があったから今の自分があるというのは、1番思いますね」