ラーメン一杯2千円でも「待ち時間をカネで買えるなら楽」 人気店で「ファストパス」導入が増えているワケ
■ファストパスで機会損失を防ぐことができる 東京・高田馬場にある人気店「博多ラーメン でぶちゃん」は、以前は無料で予約ができるシステムだったが、1年ほど前から390円の予約手数料(ファストパス)をとるようになった。 店主の甲斐康太さん(41)がこう話す。 「10人単位の無断キャンセルが続いたことからファストパスにすることを決めました。お客さんが行列して待っているなか、無料で席を確保しておくよりも、店側として機会損失にはならないし、非常に助かっています」 同店のファストパスもスマホで購入できる。当日のキャンセル料は一人あたり3千円。同店のラーメンは一杯1100円~で、ファストパスを買うと1490円~になる。ラーメン一杯約1500円と考えると一見高いようにも思えるが、利用者は増え続けており、3人以上の団体で利用するケースも多いという。 さらに同店では、ラーメンの値上げを見据え、2年前から1080円以上だった時給を1300円以上に上げ、深夜や残業時は25%増と、スタッフの働き方にも気を配る。甲斐さんは、新たなビジネスモデルはここにも貢献していると話す。 「飲食業界も非常に人手不足です。昨今のコロナ禍もあって、営業時間も短縮し、従業員の負担も減らしていました。そのため、勤勉でいいスタッフを集めるために苦労していましたが、新たなビジネスモデルがあることで、スタッフの質など、お店としてお金をかけるべきところにかけることができています。お客さんに良い商品を提供するうえでも、ファストパスというビジネスモデルが店の助けになっています」(甲斐さん) ファストパスを運営するTableCheck社(東京・銀座)によると、同社のファストパスのシステムを導入している飲食店舗は全国で約60店舗、利用者は累計で20万人近くにものぼるという。 フードジャーナリストの山路力也さんは、ラーメン店でファストパスについてこう解説する。 「ラーメン店のファストパスは、言い換えると予約システムのことです。ラーメン店は、レストランなどの従来の予約システムを導入しづらい業態でした。通常は予約をとる店ではないので、「行列に並ばなくてもおいしいラーメンが食べられる権利」という付加価値として料金を上乗せした、というのがファストパスの概要です」