その自由診療の「高額な検査」はお金と時間の無駄かも!結果が陽性でも認知症になるとは限らない理由【山田悠史医師】
一方、検査を過信してしまうと、逆に陰性の結果が出た場合、「自分は認知症にはならない」と安心し、他の問題が進行している可能性を見逃しやすくなるかもしれません。バイオマーカーが陰性であっても、他の種類の認知症や神経疾患のリスクは依然として存在します(参考文献4)。血管性認知症やレビー小体型認知症は、アミロイドβが全く脳内になくても発症するのです。あくまでアミロイドβはアルツハイマー病の可能性を伝えるだけです。 またそもそも、血液検査によるバイオマーカーの測定はまだ研究段階であり、一般的な診断法として確立されていません(参考文献6)。他方のPET検査は多くの医療機関でも活用されているものの、PET検査となると高度な機器と専門的な知識が必要で、自由診療の場合その分費用は高額です。これらの検査を受けることで、精神的な負担だけでなく、お金や時間の負担も増えてしまうということです。
医療行為を「家電」のように捉えないで
また、今では誰もが使えるモバイルアプリなどで認知症を検出する取り組みもあり、簡単にそういったものも手に入りますが、それらもまだ信頼性が十分ではありません(参考文献7)。今後の技術の進歩に期待は寄せられていますが、多様な人々への適用には疑問が残ります。そうしたアプリを信頼性が確立されていない段階で売られているとしたら、その背後にはビジネスサイドの利益追求があると疑う必要があるでしょう。 医療行為を考える場合には、よくありがちな「家電思考」は捨てるべきです。家電なら、手軽なもの、高額なものが良いという判断基準になるかもしれませんが、医療行為はそうではありません。手軽さや高額さに惑わされず、正確な情報に基づいて行動する必要があります。 むしろ、高額な検査こそお金と時間の無駄になるだけでなく、不必要な不安や誤解を生む可能性があります。興味本位で手軽な血液検査や高額なPET検査を受けてしまうと、不安ばかり煽られ、必要のないサプリメントや治療法まで売りつけられてしまうことにつながりかねません。 前回記事「「認知症に効く」とうたう健康食品に、高いお金を払う価値はあるのか?エビデンスのすり替えに注意を【山田悠史医師】」>>
山田 悠史