WBC欠場の大谷は謝罪する必要はあるのか。球界大御所は「大谷は悪くない」
「どういう行き違いがあったのか、細かい内部事情は知らないので、そこへのコメントはできないが、大谷は悪くない。主催国のアメリカでさえ故障の可能性のあるピッチャーに関してはトップ選手は出てこない。そもそも、シーズンの開幕を控えているこの時期に大会をやることが間違っているのだ。選手にとっては、それほど価値がないWBCで、選手生命をかけてプレーするよりも、シーズンに備えることが重要に決まっている。 野球選手としての人生は長いのだ。大谷の故障の度合いはわからないが、今、無理することが日本の宝である選手の将来にかかわってくるのなら、辞退は当然で、誰からも批判されることはない。結局、日本人のメジャーリーガーピッチャーも、所属球団の圧力にあって、全員が辞退した。日ハムの手順には、問題があったのかもしれないが、所属球団が監督も含めて、大谷のことを一番に考えて、辞退を申し入れたのも、それと同じではないか。日ハムの判断は、“かしこい”というか、当然の行動をしたにすぎない」 広岡さんの意見は正論だろう。出場が、競技人生に多大な影響を及ぼすサッカーのワールドカップであれば、また辞退に関する価値観も違ってくるだろうが、現状の野球界におけるWBCの価値観で言えば、辞退は納得できるし、誰も大谷を責めることはできないと思う。 だが、ここに至る手続き上の問題は残った。 すでにメンバーに選ばれている大谷の投手辞退は、日ハムでなく、侍ジャパンが行うべきだったし、日ハムは、侍ジャパンの発表があるまで 対応は待つべきだった。キャンプインで、メディアにあれこれ勘ぐられるのが、嫌なら、ギリギリのタイムスケジュールもNPB側とつめながら、作業を進めるべきだった。 しかし、裏を返せば、NPB側がミスコミュニケーションにならないような積極的な働きかけ、及び、リードする必要があったのだろう。あれだけ選手選考に関するコメントには、慎重を期してきたはずの小久保監督が、「詳細は把握していない」と、思わず本音を記者に漏らしてしまったのも、あとから考えると不用意ではあった。WBCでは前大会でもグラウンド外でのチーム運営、管理に不満が出ていたが、その教訓は生かされていないのだろうか。 一気に戦力ダウンしたチームを率いてV奪回を宿命づけられる小久保監督は気の毒である。 「監督経験のない中、小久保は一生懸命やっている。彼は教えることのできる指導者」と、評価している広岡さんも、「小久保監督にとっては、辛い状況になったが、日本と韓国以外は、本気になってやっていないんだから、開き直って指揮をとればいい」とエールを送った。 (文責・駒沢悟/スポーツライター)