豊作だった夏ドラマ…最も面白かった作品は? 振り返り座談会(1)『海のはじまり』の足りない部分を描いた隠れた名作は?
2024年夏期ドラマを振り返るドラマ座談会を開催。『海のはじまり』や『西園寺さんは家事をしない』など注目度の高い作品を中心に、3名のドラマライターがそれぞれの魅力を深掘りし、共感ポイントや俳優、脚本の魅力に迫る。ドラマファン必見の座談会レポートをお届け。今回は第1回。(文・編集部)
「感想を人に話したくなる」 『海のはじまり』が大ヒットした理由とは?
―――今期は、『海のはじまり』(フジテレビ系)の注目度が飛びぬけて高かったように思います。その要因はどこにあるのでしょうか? まっつ「感想を人に話したくなる、というのが大きいと思います。展開やキャラクターに賛否両論もありましたが、それ自体が狙いだと、プロデューサーの村瀬健さんが他メディアの取材でお話されていたので、視聴者はある意味で作り手に踊らされたわけです。これだけの反響があったわけですから、制作側にとっては大成功でしょう」 苫「生方美久さんの書くドラマは、ちょっとしたシーンにも意味があるんです。例えば、第4話での弥生(有村架純)が妊娠を当時の彼氏に告げる回想シーン。弥生が、コーヒーをカフェインレスから普通のコーヒーに注文を変えたところが話題になりましたが、気づく人は気づくような細かい演出が多いんです。 過去作『silent』(2022、フジテレビ系)や『いちばんすきな花』(2023、同局)でも同じことが言えますが、みんな細かいところまで注目して、その意味を考えるようになっています。今、これだけコンテンツに溢れていて、真剣にテレビと向き合う時間が少なくなっている中で、それを促すパワーは、近年では生方さんのドラマが一番強いと思います。エンタメ業界の人からしてみたら、こういう現象が起こるということは、ある種の救いかもしれません」 あまの「生方さんは過去の2作品を経て、その作風が世に浸透しているからこそ、視聴者は自ら画面に集中するんですよね。3作目でその境地に至れるということは、ものすごいことだと思います」