ザックJの守備崩壊はなぜ起きたのか
ブラジル、イタリア、メキシコ相手に3戦全敗。グループA最下位での1次リーグ敗退に加えて、得点4に対して失点9に終わった日本代表の現実をどう受け止めるべきか。開幕まで残り1年を切ったW杯本大会へ向けて浮き彫りになったのは、アルベルト・ザッケローニ監督の采配に対する是非と、守備陣崩壊への危機感である。 1点を追う後半20分。ザッケローニ監督はFW前田遼一(ジュビロ磐田)に代えてDF吉田麻也(サウサンプトン)を投入する。慣れ親しんだ「4‐2‐3‐1」から、親善試合ですら結果を出した試しがない「3‐4‐3」への変更には正直、驚かされた。 メキシコ戦で勝ちにいくのならば、キャプテンのMF長谷部誠(ヴォルフスブルク)をして「時期尚早という気がする」と言わしめる「3‐4‐3」への変更はありえない。選手たちも戸惑ったはずだし、実際、指揮官が意図したサイド攻撃はメキシコにまったく脅威を与えなかった。何よりも相手のセットプレー時のマークの受け渡しは、しっかりとできていたのだろうか。 守備への意識の高いザッケローニ監督は就任以来、相手のCKやFKに対してマンツーマンで守ることを指示している。おそらくは日本に身長180センチ台の選手が少ないためだが、ゾーン、ゾーンとマンツーマンの併用を合わせた3つの守り方がある中で、マンツーマンは「諸刃の剣」的な側面を持つ。両チームの選手交代などで、マークする選手に対して混乱が生じるためだ。 案の定、吉田投入から1分後にセットプレーから失点を喫する。FWドスサントスが蹴った右CKをDFミエルがニアサイドですらし、ファーサイドにいたFWエルナンデスが頭で叩き込んだ。DF内田篤人(シャルケ)がマーク役だったが、前に入られた挙げ句に一度背中に回り込まれ、直後に死角から再び飛び込んできたエルナンデスにまったく対応できなかった。 セットプレー時におけるエルナンデスのマーク役は、元々はMF細貝萌(ヘルタ・ベルリン)だった。後半14分にDF酒井宏樹(ハノーヴァー)に代わって内田が投入されたことに伴い、細貝はそれまで酒井宏がマークしていたMFサバラをケア。さらに吉田が投入されると、細貝はそれまで前田が担当していたDFレイエスのマークに回った。 なぜここまで頻繁にマークする相手を変えるのか。相手選手の体格や特徴が考慮されているのだろうが、ただでさえマンツーマンは守る側が受け身になって後手を踏みやすい。3月のカナダ戦、ヨルダン戦、5月のブルガリア戦、イタリア戦、そしてメキシコ戦と日本は立て続けにセットプレーから失点している。マンツーマンの限界を物語っていると言っても決して過言ではない。 元日本代表MFで、現在は評論家を務める水沼貴史氏は今大会で喫した9失点のうち「半分は防げたし、防がないといけない」とこう続ける。 「特にセットプレー時の守り方は、再考の余地がある。マンツーマンとゾーンの割合は、世界的には半々くらい。マンツーマンの方が選手個々の責任の所在がはっきりするし、ゾーンは選手が置かれたエリアに集中するので守り方がはっきりする。ただ、失点しても責任は問われない。2失点目の場面では、ニアサイドの前に21番の選手(ミエル)に入り込まれたことが問題。21番をマークしきれずに、後ろへすらされてしまった。マンツーマンとゾーンを併用する手もある。どれが最も守りやすいのか、GK川島の意見も聞いてみないといけない」