脱炭素加速の新戦略 政府、原発や再エネ拡大 電力大量消費の産業集積も議論
政府は13日、2040(令和22)年に向けた脱炭素化と産業政策の方向性を盛り込んだ新たな戦略を策定すると決めた。原発などの活用促進や、データセンターなど大量の電力が必要となる産業の集積の在り方について協議し、今年度中の取りまとめを目指す。2050(同32)年に温室効果ガスの排出を実質ゼロとする「カーボンニュートラル」を実現するための指針と位置付ける。 新戦略「GX(グリーントランスフォーメーション)2040ビジョン」を策定する方針は、13日の「GX実行会議」(議長・岸田文雄首相)で決定。首相は「官民で共有する脱炭素への現実的なルートを示す」と強調した。 新戦略に向け、政府は原発や再生可能エネルギーといった「脱炭素電源」への投資、活用を促進する方策を重点的に議論する。その上でデータセンターや半導体工場など電力を大量消費する産業に関し、脱炭素電源の立地を踏まえた集積や送電網の在り方を模索する。 水素やアンモニアなどの新エネルギーの供給確保も協議。窓ガラスなどに設置できる次世代太陽電池「ペロブスカイト太陽電池」など次世代技術の大型プロジェクトの支援の方策も話し合う。 二酸化炭素(CO2)排出量を売買する「排出量取引制度」で、令和8年度に企業参加を義務づける法整備も検討する。 岸田政権は4年にGX実行会議を設置、エネルギーの安定供給や脱炭素化について議論を重ねてきた。昨年には今後10年程度の脱炭素化の方針「GX推進戦略」を閣議決定した。 だが、中東情勢の緊迫化に伴うエネルギー事情の不安定化や、大量の電力を消費する人工知能(AI)の急速な普及といった環境変化を受け、計画を発展的に見直す。一連の議論は、15日に協議を始める中長期的なエネルギー政策の指針となる「エネルギー基本計画」などと並行して進める。(織田淳嗣)