《ブラジル》在宅重病患者が深刻な危機に=医療機器止めたサンパウロ市大停電
大サンパウロ市圏では11日に発生した暴風雨の影響で、15日午前6時現在でも約25万戸で停電状態が続く。そのため呼吸器などの医療機器を必要とする人々の生活に深刻な影響を及ぼしていると14日付G1が報じた。 サンベルナルド・ド・カンポ市に住むエロイーザさん(18歳)は、脊髄中の筋肉を動かす運動神経細胞が変化し、手や足などの筋肉が弱くなっていく疾患「脊髄性筋萎縮症(SMA)」を患っており、生命維持のために一連の装置を必要とする。両親は娘の呼吸器を動かすために、車のバッテリーに接続するという苦肉の策を取らざるを得なかった。 父マリオさんは「娘にとって電力は生存に関わる不可欠なもの。人口呼吸器自体のバッテリーは5~6時間しか持たない。薬液を一定の速度で正確に投与するための輸液ポンプや、輸液加温機にも依存しており苦肉の策で車から電力を引いた」と語った。 「停電から免れた近所の人の協力を得て、電気技師を雇ってコードで電力を引き込んだ。医療機器使用者のための『重要顧客登録』なるものが存在するが、全く役に立たない」とも述べた。彼は、適温保存が必要な高額な医薬品を娘が服用していることにも言及し、「自宅には3本で16万5千レアル(約440万円)もする医薬品が備蓄してある。早急な電力回復が必要だ」と述べた。幸いなことに、同取材から十数時間後に復旧した。 サンパウロ市西部ヴィラ・ロマーナ地区では、人工呼吸器を使用するアントニオさんのために、即席でガソリン発電機が用意された。娘のレナータさんは「生きるために電力を必要とする人間がいるのに、60時間以上もこの絶望的な状態が続いている。電気がなければ父は呼吸できない。発電機を購入して、なんとか呼吸器を作動させているが、薬など多くのものを失った。『2時間後に電力が復旧する』と言われてから、ずっとこの状態だ。全てが嘘だ」と悲鳴のようなコメントを発した。 サンパウロ市南部ジャバクアラ地区に住むジュリアナさんによると、暴風雨が襲う数時間前に父親が虚血性脳卒中を発症し、同地区のサボヤ病院に搬送されたという。「院内は発電機を使用して運営されていた。父の経過観察のためには、再度のCTスキャンを行う必要があったが、大電力を消費する検査機器を動かすと病院全体の電力が落ちてしまうため、検査ができなかった」と説明した。 高齢者のロゼリさんは、自分の息子に連絡を取るのを手伝ってくれる人を探して通りをさまよった。冷蔵庫が使えないため、夫と自分の薬を廃棄せざるを得なくなるという不安を抱え、「すでに4日間も電力がなく、食料はすでに傷んでいる。私たちは82歳と83歳の高齢者夫婦で薬が必要だ。私もインスリンを摂取しなければならない。4日も外に置いておくわけにはいかない。もう耐えられない」と涙ながらに語った。 電力供給会社エネルの対応の遅さが問題視されており、サンパウロ市市役所は同社に対し、電力が未だ回復していない地域について速やかに復旧作業を進めるよう求めた。それが実現しない場合、同社に1日あたり20万レアル(約530万円)の罰金を科すよう要求したと報じられた。また、タルシジオ・デ・フレイタス・サンパウロ州知事は同社のコンセッション契約の解除を要請する意向を示した。