第162回直木賞受賞会見(全文)川越宗一さん「これからも期待にこたえていきたい」
受賞をどう受け止めているのか
毎日新聞:毎日新聞の須藤です。ご受賞おめでとうございます。 川越:ありがとうございます。 毎日新聞:先ほど選考委員の講評の中で、まだ今回、初候補で、書き下ろしの長編2作目での受賞ということで、今後にかなり期待を寄せられて、期待を込められた受賞決定なのかなというお話があったんですが、その辺、期待されているなということを踏まえて、ご受賞をどのように受け止められますでしょうか。 川越:ちょっと今、選評を初めて聞いたので、そうだったのかというのは正直思ってるんですけど、どうかな。今後に期待を掛けられているということについては、もちろんお応えしていこうと思っています。自分の代表作とかについて、何ですかって聞かれたときには、常に次の作品ですと答えれるような作家活動ができたらなと思っています。 司会:ありがとうございます。いかがでしょう。じゃあ、その後ろの方。男性の方ですね、眼鏡の。お願いします。
ピウスツキの胸像に出合って人生が変わったことをどう思うか
北海道新聞:北海道新聞の【オオハラ 00:28:18】といいます。受賞おめでとうございます。 川越:ありがとうございます。 北海道新聞:主人公の2人が、いろんな人物に出会って人生が変わったように、川越さんが、白老のアイヌ博物館のピウスツキの胸像に出合って人生が大きく変わったわけですが、そのことを思い返してどう思われますか。 川越:僕自身の個人的な人生の経験なんですけれども、自分の力や選択で人生を切り開いてきた感じが実はあまりなくて、昔からいろんな人に支えられたり、あるいはチャンスであったり、転機をもらって今までやってこれたような気がします。なので作中の人物でもそういう書き方になっていますが、僕個人のことでいえば、今まで出会ってくれた全ての人に感謝ですね、しています。 司会:ありがとうございます。ほかに。すみません、ちょっと前列の男性の方。
アイヌの記録者たちを広く伝えることになるがどう思うか
日本経済新聞:日本経済新聞社の【ムラカミ 00:29:29】と申します。ご受賞おめでとうございます。 川越:ありがとうございます。 日本経済新聞:この小説の中には、金田一やピウスツキ、アイヌのことを記録する人たちが出てくると思うんですけれども、川越さんがこの小説、直木賞を受賞して、その方の記録が川越さんの小説を通して、より多くの人たちに伝わっていくとは思うんですけど、そのことについて何か感想などがあれば教えていただけますか。 川越:今まで世間にあまり知られていないことだったとは思うので、それが世に広まるきっかけに、もし僕の作品がなるのであれば、それはとても光栄には思います。と同時に、小説ですので、やはりフィクションで、虚構であったりとか、僕が考えた想像とかも入っています。なんだろうな、もちろん、正しい記録とか、きちんとした経緯というのを調べられたいという人がもしいたら、たぶんそれに応えられるような資料であったり、情報というのは、日本という国はすごく容易にアクセスできると思うんですね。図書館とかありますし、あるいはもう学校の論文とか、大学の論文とかもネットとか見れますから。 なので、そういう、言うたら非常に安定した豊かな社会の日本におられるので、もしご興味を持たれたら、かつ、より深く知りたいと思われた場合は、そういう情報に当たっていただければ、フィクション1つ書いた人間としてはとても光栄なことだと思います。 司会:ありがとうございます。ほかにある方。今のご質問の方、お隣の方に。