スクイッド、「悪」をテーマにした新作アルバムを発表 伊藤高志の実験短編映画をフィーチャーした新曲MVも公開
2021年に「ワープ」からデビューし、ポストパンクの新境地を切り拓くような刺激的なサウンドで人気を博すスクイッド(Squid)が、3rdアルバム『Cowards』を2025年2月7日(金)にリリースすることを発表。新曲「Crispy Skin」がミュージック・ビデオとともに公開されています。 『Cowards』のテーマは「悪」。実在する人物や想像上のキャラクターたちが、善と悪の間に横たわる暗い海に足を踏み入れていく姿を描き出した作品です。食人が常態化する世界を描いた書籍『Tender Is The Flesh』からインスパイアされたというリード・シングル「Crispy Skin」では、オリー・ジャッジによる緊張感漂う歌声が、ディストピアの世界を駆け抜けていきます。 楽曲についてジャッジは「『Crispy Skin』の歌詞は、カニバリズムが社会の常識となり、人間が製造されてスーパーマーケットで販売されるというディストピア小説からインスピレーションを受けてるんだ。こうした本を読むと、多くの人は自分がその中で道徳的な高みを取る人物だと想像すると思う。でも、この曲は、絶望と恐怖に満ちた物語の中で、道徳的な指針を持つことがいかに難しいかという現実について歌ってるんだ」とコメント。 また、あわせて公開されたMVには、映像クリエイター・伊藤高志の実験短編映画『ZONE』(1995) がフィーチャー。伊藤高志は「顔のない男についての映画。手と足をロープで縛られた不具の男は、白い部屋の中で微動だにしない。妄想に取りつかれた男は、改造された私の自我でもある。自己の内面を表した部屋の中の奇妙な場面の数々。記憶と悪夢と、暴力的イメージを関連づけることを試みた」と映画『ZONE』について解説しています。 なお、これまでもJG・バラード、マーク・フィッシャー、ナム・ジュン・パイクなど様々な文学やアートのレファレンスを隠してこなかった彼らですが、今作では他にも村上龍の『イン ザ・ミソスープ』、チャールズ・マンソンとヘルター・スケルター、フロイト、そして『ターミネーター2』まで、そのインスピレーション元は実に多岐に渡っています。 アルバム『Cowards』は、2022年の11月から2023年4月までの6ヵ月で制作されました。2023年6月発売の前作『O Monolith』のリリース前から同時進行でソングライティングやレコーディングといった準備が進められていたことになります。スタジオは前作で用いたウィルトシャーの片田舎にある「リアル・ワールド」に代わり、ポール・エプワースが運営するロンドンの「ザ・チャーチ」を使用し、マーキュリー賞受賞プロデューサーのマルタ・サローニとグレース・バンクスとともに録音。ミックスは前作に続きジョン・マッケンタイアに依頼し、これまでもコラボレーションを続けてきたダン・キャリーが、アディショナル・プロダクションというかたちでサポートしています。 レコーディングには、前作で大きな役割を果たしたパーカッショニスト、ザンズ・ダガンが再び参加。キーボードやパーカッションも務めるメンバーのアーサー・レッドベターがチェリストでもあることから、ルイージ・クァルテットによるストリングスが大幅に導入され新境地の開拓も。またローザ・ブルック、トニー・ニョク、クラリッサ・コネリーによるコーラスがアルバムのどこか瞑想的なトーン、全体がひとつの組曲のような構成を特徴づけています。 アルバムは、すでにライヴで披露されており、メンバー自ら「カニバリズムについて歌った曲」と紹介している「Crispy Skin」がオープナー。アルバム・タイトル曲「Cowards」はヨルゴス・ランティモス監督の『籠の中の乙女』とその影響元であるアルトゥーロ・リプスタインの『純潔の城』からインスパイアされていると明かされ、中世を舞台にした物語を翻案した「Fieldworks I」「Fieldworks II」ではバロック的音響が顕著に。クラウトロック的グルーヴの「Cro-Magnon Man」をはさみ、荘厳なプロダクションがきらめく「Well Met (Fingers Through The Fence)」で締めくくられ、カタストロフィックな詩世界ではあるものの、それとは対照的なある種の楽観性が全体を貫いている作品に仕上げています。 アルバム・ジャケットには、これまでカサンドラ・ジェンキンスやアヴァロン・エマーソンなどを撮ったノルウェー出身・米ブルックリン在住の写真家、Tonje Thilesenによる作品が使用されています。 Photo by Harrison Fishman