日産「コンパクトミニバン」なぜ存在しない? “5ナンバーサイズ”の「シエンタ」「フリード」めちゃ売れてるのに… 「ちょうど良い小型モデル」ラインナップしない理由は?
ラインナップしない「ワケ」
いっぽう、日産の商品展開を見ると「売らない事情」が見えてきます。 日本における現在の日産のラインナップにおいて、日本専売モデルは1ジャンルに1モデルが基本。コンパクトカーであればノートだし、ミニバンといえばセレナ(「エルグランド」もありますが放置状態)だけ。 マツダでは「CX-3」から「CX-80」まで6つものモデルが用意されるSUVも、グローバルカーとして開発した「キックス」と「エクストレイル」の2車種しかありません。 理由はラインナップをスリムにしたほうが効率のいい商売ができるからであり、効率重視である意味、“割り切ったビジネス”をしているのです。
もし日産がコンパクトミニバンを開発するとしても、それは基本的に国内専用モデル(日本に加えて香港や台湾など近隣の右ハンドル国向けだけ)となるでしょう。 発売したとしても、いわゆるカニバリゼーション(共食い)としてノートやセレナの顧客を奪うのは避けられず、それはわざわざ国内専用に開発する効率を考えれば商売としてマイナス。 多少売れたとしても全体として「得るもの」が少なく、日産として投資してもそれに見合うだけのリターンがないと考えていると捉えるのが自然でしょう。だから用意しないと推測できます。 もしも今後、日産からコンパクトミニバンが登場したら、その時は日産が「国内販売車種の展開に対する考え方を変えたとき」だと思っていいでしょう。 先日、日産とホンダはEV分野などで業務提携を進めることを発表。その内容には「車両の相互補完」として互いにOEMモデルを供給することなども含まれていました。 しかし、だからといってフリードを日産へOEM供給するかといえば、そう簡単には話は進まないでしょう。 車両の相互補完とは「自社単独で生産しても儲けにならないモデルを供給してもらう。もしくは相互補完によりお互いにメリットがある」というのが基本の考えであり、大人気モデルのフリードをホンダが日産へ供給するのはホンダとして全くメリットがないからです。 現在のホンダのラインナップにはない乗用車タイプの軽自動車EVの「サクラ」をホンダへOEM供給する、といった交換条件でもあればまた違った話になるでしょう。
工藤貴宏