現実と虚構が入り混じる──横山拓也×小山ゆうなが語る、ファンタジックなコメディ『ワタシタチハモノガタリ』
文通が、出力のトレーニングだったかもしれない
──フィクションとノンフィクションが混ざり合っていく過程はとても面白く、現代的な感覚もあります。 横山 もとは文通というところから立ち上げましたが、これをいまの時代に広めていくのは、やはりSNSだなと思いました。書いているうちに、SNSの世界の中の人格と、現実の人格が乖離している人がたくさんいる社会のことを思ったりして、結果的にすごく現実的な内容がたくさん散りばめられた作品になったかなと思います。 文通については、めちゃくちゃ語りたいことがありまして(笑)。中学3年生になるタイミングで、千葉から大阪に引っ越したのですが、そのとき、4人の友人と文通をスタートさせたんです。 小山 ! 横山 その中のひとりが、ちょっと好きな女の子で──そういう経験があって、この作品の後半で富子に語らせるのですが、手紙って特殊な媒体で、たったひとりのために、ああでもない、こうでもないって巡らせながら書く。それが、10代の時の出力のトレーニングだったんじゃないかな、と思っていて。それを富子に語らせて、作家としてそのことに気づいた瞬間が書けたらと思いました。 ──メインの4人の俳優さんについて、「こんなこともできそう」とか、「キャラクターのこんなところに寄せられそう」といった新たな発見はありますか。 小山 富子役の江口さんが素晴らしい女優さんだということはもちろん、知っていましたが、立ち稽古に入ったら、もう富子として、居る。圧倒的に凄いです。おひとりでの、見えない部分の作業の量がすごいんだなと思いました。徳人役の松尾さんは一度ご一緒しているのですが、その時はミヒャエル・エンデの翻訳劇(2020年『願いがかなうぐつぐつカクテル』)で、猫の役。今回は関西弁だし、等身大の、年齢的にもリアルな人間の役で、すごく新鮮です。ちょっと彼の人生も垣間見える瞬間も。 松岡さんと千葉さんは、すごく可愛らしくて! 妄想の世界の中は、私は映画『バービー』の世界のイメージで、なんとも言えない、作られた世界観。ふたりともそんなふうに見えていて、知性も感じるし、すごく素敵です 横山 江口さん、素直な方だと思いました。言いにくいセリフがあれば、ちゃんとそこに引っかかっているような感じもある。自分で無理やり処理するのではなく、ちゃんと「ここわかんないですね」って表明してくれて、信頼できる俳優さんという印象です。松尾さんは──江口さんの、シリアスな、一生懸命生きていくことでズレていく感じを、関西弁で的確に、ちょっと愚鈍さも持ちながら突っ込んでいく。ぴったりだなと思いました。 千葉さんは僕、すごく好きな俳優さんで、あまりテクニカルなふうに見せないのに、実はものすごくたくさんの技術を持っている。ヒステリックに怒り出す千葉さんの演技を見た時、すごく惚れてしまった。今回はそういうシーンはないけれど、(アーティストの)ウンピョウという役とリヒトという役という、二面性というか、全く違うタイプの役で、僕自身が千葉さんを楽しみたい。松岡さんも、めちゃくちゃ技術があります。今回のミコのように、演じにくい、掴みどころのない役も、ご自身なりにいろんなアイデアをもってやってくださるという期待と、もうひとつの役の(映画版のミコ役を買って出る俳優)丁子の、ざっくばらんにパンパンパンとものを言うところが、一番好きな松岡さんらしいところ。これも自分自身が稽古場で楽しみたいと思って書いております(笑)。 小山 お芝居ってお客さまと一緒に作るものなので、コメディですし、ライブで感じていただけたら。 横山 お客さまそれぞれに感じるところがあるのではないかと思います。何より、言葉の応酬! 僕自身も楽しみにしながら頑張りたいと思っております。 <公演情報> PARCO PRODUCE 2024 『ワタシタチはモノガタリ』 作:横山拓也 演出:小山ゆうな 出演:江口のりこ 松岡茉優 千葉雄大/ 入野自由 富山えり子 尾方宣久 橋爪未萠里/松尾諭 【東京公演】 2024年9月8日(日)~9月30日(月) 会場:PARCO劇場 【福岡公演】 2024年10月5日(土)・6日(日) 会場:キャナルシティ劇場 【大阪公演】 2024年10月11日(金)~10月14日(月・祝) 会場:森ノ宮ピロティホール 【新潟公演】 2024年10月18日(金)~10月19日(土) 会場:りゅーとぴあ 新潟市民芸術文化会館・劇場