現実と虚構が入り混じる──横山拓也×小山ゆうなが語る、ファンタジックなコメディ『ワタシタチハモノガタリ』
2024年鶴屋南北戯曲賞受賞作家で、演劇ユニットiaku主宰の横山拓也が、PARCO劇場で新作を書き下ろす。初恋の相手との15年に及ぶ文通、SNSでの小説の発表、妄想の中での理想の自分とイマジナリー彼氏──現実と虚構が入り混じるファンタジックなラブコディだ。9月の上演を控え、本格的な稽古がスタート、横山と、演出を手がける若手実力派、小山ゆうなとの取材会が実施され、初めてタッグを組むふたりが、舞台への意気込みを語った。 【全ての画像】横山拓也、小山ゆうなインタビューの模様ほか
主人公に、書き手としてのコンプレックスを投影
江口のりこ演じる富子は小説家志望。中学3年の時に東京に引っ越した同級生の徳人(松尾諭)と、15年もの間文通を続けた。ふたりの間には恋に似た感情があったが、徳人は30歳を迎える年に職場の女性と結婚。その後富子は、その往復書簡にかなりの脚色を加え、SNSに小説として投稿、絶大な人気を得る。富子の物語の中で富子はミコ(松岡茉優)、徳人はリヒト(千葉雄大)。その人気ぶりから、映画化の話まで浮上して──現実と虚構、また、物語ることに真正面から向き合う、新たなコメディの誕生だ。 ──まずは今回、書き下ろしでなぜこのテーマで書こうと思われたのか、お聞かせください。 横山 コメディという外枠を意識して書いてみたいという、チャレンジの気持ちがありました。自分が抱いていた書き手としてのコンプレックス、高みを目指したい気持ちを、富子というキャラクターに投影できたら面白いかなと思って、スタートを切りました。PARCO劇場で書き下ろし──もう、緊張しかない(笑)。 小山 横山さんが、プロットからどういうふうに立ち上げて、そこからどう深めていかれるのか、つぶさに見ることができて、「すごいんだな!」と思った瞬間があって──。本当に魔法みたいな感じです(笑)。 ──横山さんご自身も演出を手掛けられますが、演出についておふたりで意見交換などはされるのでしょうか。 小山 横山さんだったらどう演出されるかなと思ったりもしますし、ご意見をくださることもあるかもしれないし──確かに、演出もされる方の本を演出するのは初めてのパターンかもしれません。 横山 今回はあまり演出のことを考えずに台本を書かせていただいて、だから結構無茶なことも(苦笑)。自分の抜けている感じは台本にたくさん残っていると思うので、一緒に相談しながら、「ここは意図ですか? ミスですか?」みたいなところも共有しながら、やっていきたいと思います。 小山 そこにいる本人に聞ける、というのはありがたいですよね。いつも、「百年前の作家さんに(聞きたくてもいないので)聞きたい!」って思います。「これは絶対に思いつきで書いたでしょ!」みたいな。 横山 絶対にあると思う(笑)。