石破ショックは「2度」来る?【解説:三井住友DSアセットマネジメント・チーフグローバルストラテジスト】
2.良好な日米関係が支える日本株高
■日本株にとって「長期安定政権」と同じくらい重要なのが、「安定した日米関係」です。米国は日本にとって最大の輸出先であると同時に、海外直接投資では最大の仕向け先でもあります。また、世界的に見ても極めて厳しい安全保障環境にあるとされる日本にとって、同盟関係にある米国との円滑な連携は国防を考える上で欠くことができません。そう考えると、「安定した日米関係」が日本株にとっても重要であることは、改めて言うまでもないでしょう。 〈石破政権下でギクシャクしかねない日米関係〉 ■古今東西、世に戦(いくさ)の絶える時はありませんが、思わぬ味方の裏切りで勝敗を決することが少なくありません。天下分け目の関ケ原の合戦では、「莫大な領土を渡す」という裏取引で徳川についた小早川秀秋の裏切りにより、勝敗が一気に決したと言われています。 ■こうした観点から現在の石破新内閣を見ると、今後の日米関係には一抹の不安が付きまといます。というのも、石破新総理は米政府関係者が難色を示しているとされる「日米地位協定の見直し」や「アジア版NATO(北大西洋条約機構、加盟国同士が集団防衛の義務を負う国際機構)の検討」に言及しているからです。国内問題の金融や税制についてであれば、前言撤回で事態を収拾することは可能かもしれません。しかし、こと外交や安全保障に関わる問題では、事はそう簡単には行かないでしょう。というのも、肝心な時に「裏切られるかもしれない」と思われてしまうと、安全保障の面で信頼に基づく協力関係を築くことは極めて難しくなるからです。 ■石破新総理はこうした「日米地位協定の見直し」などについて、単に発言するだけでなく、ご丁寧にも米有力シンクタンクのハドソン研究所に寄稿までしています。米政府・軍関係者から見れば、「そういう人」と受け取られても仕方がないでしょう。 ■日米関係がギクシャクした時期を振り返ると、日本株のパフォーマンスは芳しいものではありません。特に、2009年9月に発足した鳩山内閣に始まる旧民主党政権下では、同首相が「日米中は正三角形の関係(日米、日中関係は等距離、重要性も同じ)」と発言し、更に日米の懸案であった沖縄県の普天間基地の移転について、事前調整なしに「最低でも県外」と発言し、日米関係はこじれにこじれました(図表2)。 ■旧民主党時代に日本株のパフォーマンスが低迷した背景には、リーマンショック後の不景気や東日本大震災などがあったことは間違いないでしょう。とはいえ、海外の株式が大きく切り返す中でも日本株が大きく出遅れたのは、日米関係の悪化による地政学リスクの高まりや、通商問題での米政府による意趣返し・意地悪があった可能性は否定できないでしょう。こうして考えると、米政府に近いとされる清和会(旧安倍派)の主要メンバーを党公認から外し、返す刀で日米安保に切りつける石破新総理について、苦々しく感じている米政府関係者は少なくないのではないでしょうか。